これから日本ではどこでどんな地震が起きるのか。京都大学大学院人間・環境学研究科の鎌田浩毅教授は「東日本大震災は、東日本が乗っている北米プレート上の地盤のひずみ状態を変えてしまった。そのために地震発生の形態も変わってしまった」という——。

※本稿は、鎌田浩毅『首都直下地震と南海トラフ』(MdN新書)抜粋の一部を再編集したものです。

東日本大震災
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東日本大震災が内陸で起こる地震を次々と誘発した

東日本大震災の直後から、震源域から何百キロメートルも離れた内陸部で規模の大きな地震が発生しています(図表1)。たとえば、3月12日午前3時59分に長野県北部でM6.7の地震が起きました。

この地震は震源の深さ10キロメートルという浅い地震で、長野県栄村で震度6強を記録し、東北から関西にかけての広い範囲で大きな揺れを観測したのです。また、3月15日午後10時31分には、静岡県東部でM6.4の地震があり、最大震度6強の観測でした。

これらの地震は、典型的な内陸型の直下型地震です。2004年の新潟県中越地震や2007年の新潟県中越沖地震と同じタイプの地震なのです。

海域で巨大地震が発生したあと、遠く離れた内陸部の活断層が活発化した例は、過去にも多数報告されています。

たとえば、1944年に名古屋沖で東南海地震(M7.9)が起きた1カ月後の1945年に、愛知県の内陸で三河みかわ地震(M6.8)が発生しました。また、1896年に三陸沖で起きた明治三陸地震(M8.5)の2カ月半後には、秋田・岩手県境で陸羽りくう地震(M7.2)が発生しました。

もうおわかりでしょう。このタイプの地震は、海の震源域の内部で起きた「余震」ではなく、新しく別の場所で「誘発」されたものです。東北・関東地方の広範囲にわたり、直下型の誘発地震への警戒が、今、一番備えなければならない最重要の課題となったのです。