医者とコンサルタントの共通点

「問題」と「課題」の関係について理解を深めるために、医者の診断を例にします。

私たちが病院に行くのは、体調が悪いと感じているからでしょう。しかし熱があり、身体がだるかったとしても、その熱とだるさの理由を素人である私は特定することはできません。

長田英知『あたらしい問題解決』(日本実業出版社)

それは、ただの風邪かもしれないですし、インフルエンザかもしれません。もしかしたらもっと深刻な病気の前兆なのかもしれません。この、原因が何なのかはよくわからないけれど体調が悪いという状態が「問題」にあたります。

体調が悪いという患者の訴えに対して、医者は触診をしたり喉を見たりして総合的な分析を行い、体調の悪い原因を特定=診断します。この診断の結果、たとえば「あなたの病気は熱と咳を伴う風邪です」となったとき、体調が悪い状態から、熱や咳といった解決すべきポイントが切り分けられ、「課題」となります。

最後に医者は熱を下げ、咳を止めるための薬を処方します。この処方が「施策(解決策)」にあたります。熱や咳といった「課題」が解消されると、体調の悪さという「問題」が解決され、健康な身体を取り戻すことができます。

「問題」はそのままでは、有効な解決策を導き出すことはできません。「問題」と「課題」の違いを理解し、「問題」を解決可能な「課題(あるいは課題群)」へと切り分ける、つまり「セグメント」することで、私たちははじめて解決の糸口をつかむことができるのです。

問題を「分ける」と、どこから手をつければ良いか「分かる」

ビジネスにおいて何らかの問題に直面したとき、問題が複雑過ぎて、どこから手をつけていいか分からなくなった経験が皆さんも一度や二度はあると思います。一方、何らかの視点で問題を切り分けることで、状況が分かりやすく見える化され、改善のためにどこから手をつければいいか明らかになったという経験も同様にあるのではないでしょうか。

このことをビジネスの例で考えてみましょう。たとえば、あなたは陶器の製造工場を経営していて、陶器の皿を大量生産しているとします。しかし最近、焼き上がった皿の不良品の割合が高くなっていました。

工場で生産される製品の不良品が多いというのは「問題」となります。ただし、この「問題」をいくら眺めていても、どこを直せば状況が改善するかは分かりません。