封鎖は延長、しかし明るい見通しも

そんな4月15日、2回目の封鎖期間延長を伝えたウィルメス首相は、5月4日からの段階的封鎖解除の準備に入ったことを伝え、市民の萎える心を奮い立たせたのだった。

「3月12日の封鎖措置以来、みなさんがルールを守ってくださった、その努力と犠牲を心から誇りに思っています。ベルギーにとって第二次大戦後、一度も体験したことのない困難に(私たちは)直面しています。私たちの医療体制が(隣国の惨状と比べて)飽和することなく全ての患者に必要な医療が提供できてきたのは、ひとえに市民のみなさんの献身的な努力のおかげだと思っています。それでも、老人ホームで多くの死者が出てしまったことは事実で、速やかに緊急対応を進めています。ただ、『透明性』を尊重して、一部過剰にカウントしていることも覚悟して死者数を計算しています。今後の精査で(真のコロナによる死者数が)明らかになっていくはずなので、どうか心配しすぎないでください」

まだベルギーでは降霜すらある肌寒い3~4月、肺炎などで亡くなるすべての高齢者をコロナ死に勘定すれば、驚愕の死者数もありうるかもしれない(北半球の国では寒い時期に高齢者の肺炎による死者数が多い)。それに、イタリアやフランス、オランダなどの隣国がこの頃、重篤患者をドイツに搬送して治療を受けさせてもらっていた一方で、ベルギーでは患者の治療は自国内で完結していた。首相の説明は市民をとりあえず納得させて、封鎖解除を心待ちにする市民の気持ちを少しだけ軽くした。

こうして4月15日には、5月4日からの封鎖解除に向けて、専門家チームのsciensanoや危機管理専門家グループに加え、統計学やマクロ・ミクロ経済、法律、社会など広い分野の専門家や実業家が集められた出口戦略のための専門家グループGEESが結成され、「これ以上ないほどに慎重で段階的な」解除計画を4月24日に発表することが告げられた。

写真提供=Thomas Daems – Office of Ms. Sophie Wilmès
ソフィー・ウィルメス首相(当時)(中央)2020年4月15日撮影

園芸用品店の営業を一足早く許可

3月半ばからスタートした原則外出禁止の日々。ようやく長いトンネルの先に光が見え始めたのは4月半ばを過ぎた頃だった。

突然のコロナ危機でデビューしたウィルメス首相は、しだいにその重職が板につき始め、言動の端々に、彼女らしさがより強く見いだされるようになっていた。

例えば、正式な封鎖解除(5月4日)より一足早く、種苗や園芸用品を売る店と大工道具や材料を売る店の営業を解禁し、老人ホームや障害者施設への訪問を厳しい制限付きながら少しだけ許容すると発表した4月15日の晩。国営テレビに出演したウィルメス首相は、自分の言葉を紡いでこんな風に語った。

「社会の中で、最も弱い人々のことを考えて、例えば、高齢者、障害のある方、一人住まいで自分から出かけられない方たちに、ほんの少しでも思いをはせたのです。(中略)一人ひとりに封鎖が押し付けているつらさを、少しでも優しく、軽くできないかと」