政府関係者の空気は「更迭やむなし」に傾いている

4日の謝罪会見では、森会長本人が「7年間やってきて私から辞めるということはありません。みなさんが邪魔だとおっしゃるなら、おっしゃる通り老害を掃いてもらえたらいい」と述べている。

五輪オフィシャルスポンサーの新聞4紙のうち、朝日は「すみやかな辞任を求める」と森おろしを鮮明に打ち出し、毎日と日経は「一連の言動は大会を率いる責任者としては失格」「それ(撤回)だけですむことではない」と明言こそ避けたが事実上の辞任を要求している。

外堀を埋められた政府関係者の空気は、「更迭やむなし」に傾いている。聞こえてくるのは、菅首相が「いざとなれば私が動く」と周辺に語っていること。安倍晋三前首相を含む細田派内からは、森会長を組織委の最高顧問に棚上げし、後任に組織委理事で元五輪担当相の丸川珠代参院議員をあてる案が浮上しているという。

写真=時事通信フォト
自民党の新ポスターを発表する丸川珠代広報本部長=2020年10月13日、東京・永田町の同党本部

丸川氏なら森支配の実質は変えず、派内の反発も最小限に

女性会長の登場で国際世論の批判もかわせるし、丸川氏なら森支配の実質は変えず、派内の反発も最小限に抑えられる。さらに菅首相も森会長も、ともに「目の上のタンコブ」とみてきた小池百合子東京都知事への牽制になり、千代田区長選で都民ファーストに苦杯を喫して7月都議選で挽回を期す自民都連も喜ぶ――といいことずくめの案と考えているらしい。

昨年の都知事選でも小池対抗馬に丸川を担ぐ話が取り沙汰されたが、要するに自民は「困ったときの丸川頼み」なのだ。

だが、ちょっと待った。森失言のもうひとつの核はハッシュタグにも取り上げられた「わきまえる女」である。

森会長は「私どもの組織委員会にも、女性は何人いますか、7人くらいおられますが、みんなわきまえておられます。みんな競技団体からのご出身で国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりです。ですからお話もきちんとした的を得た、そういうのが集約されて非常にわれわれ役立っています」と言った。これも身内への気配りだろうが、これに女性たちがカチンときた。男の前では言いたいことをこらえるのが女の美徳といわんばかりに聞こえるからだ。