いろんな学び方で学ばせる
さて、子どもが学習を通して身につけるのは、学んでいる科目に関する知識やスキルだけではありません。学びのプロセスの中で学び方も身につけています。子どもが多様な学習方法に触れて、いろいろな学び方を学べる環境をサポートすることも子どもの才能を伸ばす重要なヒントです。
急激に変容していく社会。子どもたちはこれまでなかった課題やプロジェクトに出会い、新しい知識やスキルを素早く身につけることを期待されます。その時々の状況に応じて、自分に必要なものを効率よく学んでいく能力は、今最も必要とされていくスキルの一つです。
さまざまな学び方を身につけておき、状況に合わせて学び方を選択できれば、目の前に与えられた課題に自分の才能を最大限に引き出すことができます。困難に行き詰まってしまった場合でも、やり方を変えてみたりして試行錯誤することで、柔軟な解決法にもつながるでしょう。
また、多様な学習方法を習得することの効果は、脳科学でも示されてきました。子どもにとって学習効果が高い特定の「学習スタイル」はなく、いろいろなやり方で学んだ方がよいのです。
「2+3=5」の教え方のバリエーション
例えば、「2+3=5」というシンプルな数式の学び方にもいろいろなアプローチが存在します。
「2」「+」「3」「=」「5」などの記号的な理解。2つと3つのものが5つになることを表した図解での理解。
その他にも、2つのものと3つのものを手で動かしながら5つになることを確認したり、2つのものと3つのものが5つになることを声を出して数えて確認するなど、さまざまな理解の方法があります。
ここで、それぞれの違ったやり方をした時、異なる脳の領域が活性化されます。それらの違う脳の領域が「2+3=5」の理解において活性化されることで、それぞれの領域のつながりが強化され、学びが最適化されることが分かっているのです。
また、数々の偉業を達成した人々の脳の特徴を分析した研究で、違う脳の領域同士のつながりが通常よりも強くなっていることが発見されました。そのため、多様な方法や視点から物事を学ぶことで、柔軟で創造的な考え方ができるようになるのです。
さらに、さまざまな学習方法に触れることで、子どもの学びにおける主体性をさらに引き出すことができます。
ある一つの方法が習慣化している時、子どもがそれを意識することは少ないかもしれません。他の異なる方法を学ぶことは、自分の習慣に取り込まれている方法を意識的に見つめ直す機会につながります。さまざまな方法を意識し、自分の学びの方法や環境を考えることは、学習に対する主体的な視点を養っていくことにも役立つのです。
子どもが学ぶ必要性を意識し、そうした目線から自分の学びに主体的に取り組んでいけるようにサポートしていきましょう。