青汁王子はどうやって青汁を売っていたのか

私がフルーツ青汁のEC事業(ネット販売)を進めていたのは2014年ごろ。それまで高齢者が飲む“苦い薬”のイメージだった青汁を、若い女性向けに飲みやすいフルーツ味にして“美容商材”として販売していました。今でこそTwitterフォロワー数149万人、YouTubeチャンネル登録者数28万人の私ですが、当時は個人のSNSアカウントはほとんど更新しておらず、ネット通販で頼っていたのはLP(ランディングページ)と呼ばれる商品の紹介ページだけでした。

LPの場合、ページを開いたときにすぐに目に入るファーストビューでいかに興味を引くかが重要です。ファーストビューで興味を持つと、消費者はページを下にスクロールしてくれるからです。もちろん、今でもこうしたノウハウでネット通販をしている企業はあまた存在します。

中国の口紅王子は“人”で売っていますが、当時日本でかなり売り上げを伸ばしていた私のフルーツ青汁は、ページの“キャッチ文言”と“写真”で売っていました。これをリアル店舗で置き換えた場合、前者が店頭販売員、後者がチラシを販促ツールとして使っていたというとわかりやすいでしょう。

当時私が実行していたのは、複数用意したLPをランダムで表示させ、そのうちどれがもっともクリックされやすいか測る「ABテスト」と呼ばれるものでした。例えば、ファーストビューの画像を4パターン用意し、最もビューがよかったページを採用する。そして、また4パターン選択肢を用意し、その中でコンバージョンレート(クリック率)が高いページを検証する……の繰り返しです。「わがままボディを解消!」と「メタボ解消!」では、ほぼ同じような意味ですが、「わがままボディ」という文言のほうがクリック率が1.5倍以上高かったりするのです。

こうして、ABテストを繰り返して購買率を高め、そこで得た売り上げを広告費予算に回すというサイクルを繰り返して売り上げを伸ばしていきました。

日本の人口規模はライブコマース向きではない

さて、そんな私が日本で口紅王子は生まれないと主張する根拠はなんでしょうか。

三崎優太氏(提供=扶桑社)

理由は2つ。

一つは、人口の差です。

現在、日本の人口が1億3000万人なのに対し、中国は約14億人。その差は約10倍と圧倒的です。両国では1回のライブ配信による視聴者数がまったく異なるのです。

私が青汁を通販していた際に使っていたネット広告は「広告バナーを1クリックすると○円」というように広告単価が決まっていました(現在もそうです)。つまり少額な予算から始められるため、数個しか売れなかったとしても広告費で赤字になることはあまりないでしょう。特に、中国に比べて圧倒的に人口が少ない日本では、小さくスタートして、小さな売り上げを立てていくという仕組みが主流になりやすいのです。

もちろん、ネット広告は従量課金制なので事情は中国も同様ですが、ライブコマースはインフルエンサーに初期費用を支払う必要があるため、小規模ビジネスだとなかなかタッグを組みにくい。つまり、日本の場合ライブコマースを進めにくいのです。

また、中国では一度のライブ配信で数千から数万人が商品を購入することも珍しくありません。いわば日本のテレビ通販と同じ規模の売り上げが動いてるので、ライブコマースを積極的に実行するインセンティブが働きやすいと考えます。