自慢のタワマンだったが「住んでいることをバレないようにしている」

このタワマンでは、ある住人が感染者だという噂が広まり、のちに非感染者だと判明するなど住民同士が疑心暗鬼に陥ったという。さらにこの男性を含む同タワマンの住民は、居住者同士の軋轢だけではなく、外からの厳しい視線にもさらされることとなった。

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「感染者が出たという噂はマンションの外にもすぐに広がった。そのせいなのか、妻がなじみのクリーニング屋に洋服を出しに行った時に、ほかの客よりも明らかに厳重にアルコール消毒をさせられたそうです。以前は、ウチのタワマンに住んでいるだけで近所でも『すごい』などとチヤホヤされたりしたんですが、今はできるだけどこに住んでいるのか、バレないようにしています」

感染者が出たというのは事実なのか。管理する三井不動産レジデンシャルサービスに問い合わせたところ、「個別の案件についてはお答えしかねる」との回答。ただし同物件を扱う不動産仲介業者に聞いたところ「4月中旬に感染者が1人出たと聞いている」と認めた。

前出の住人によれば、エントランスの貼り紙はその後、すぐに剝がされたという。資産価値が低下するので周知すべきではないという意見が上がったからだ。前出の三井不動産レジデンシャルサービスは「一般論として」と前置きしたうえでこう答えた。

「感染者が出た場合を含め、コロナ対応などは住民様による管理組合が主導で決定しています」

パンデミックが浮かび上がらせたタワマンの闇

こうしてコロナ対応に関する住民のコンセンサス策定が急がれるなか、会議が紛糾している管理組合も少なくなさそうだ。

江東区・豊洲エリアのタワマン管理組合の役員を務める40代男性は話す。

「目下の議題は、現在閉鎖中のジムやキッズルームをどうするか。再開は時期尚早とする声がある一方、閉鎖されたままだと共益費・管理費が払い損だと主張する人もいる。再開するにしても、今後の感染予防にかかるコストをどうするかという問題もあり、頭が痛い。

閉鎖されていた間の施設管理費の一部について、運営委託先の業者に返還を求めようという動きもあります。しかし、われわれ管理組合の役員は、委託先の業者から接待を受けていて、あまり大きくは出られない事情もある。管理費の返還について特に消極的なのが組合長。私たち以上の接待を受けているのではないかと、役員の中でも疑念が膨らんでいます」

住人の分断や、施設を巡るいざこざは各地で起きている。パンデミックが浮かび上がらせたタワマンの闇はあまりにも深い。

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