20代が直面している「3つの壁」
当時の私と同じく、いまの20代のビジネスパーソンも苦しんでいる。
これまで600社16万人以上の働き方改革を支援してきたが、2020年に入り20代のモチベーション低下が顕著となった。2019年と2020年に2万9000人のクライアント企業の社員にアンケートを取ったところ、20~50代で「モチベーション増えた・やや増えた」と答えた比率が最も低いのが20代だった。
「モチベーション減った・やや減った」と答えた比率が最も高かったのが20代で、3分の1は士気が下がっている。コロナ禍でテレワークが進んだが、デジタルネイティブでテレワークにも適用しやすそうな世代が、かえってほかの世代よりも大きな悩みを抱えていたのである。
調査結果をまとめたところ、20代は「3つの壁」に直面していることが浮かび上がってきた。
①「労働時間」の壁
2019年に労働基準法が改正され、大企業も中小企業も残業の上限が設定された。会社はこぞって労働時間の管理を強化し、勤怠管理システムを導入してテレワークでも労働時間を管理できるようにした。
たしかに、寝食を惜しんで働き続けるようなスタンスはもう古い。人生100年時代には、70歳まで健康に働くことを前提にしないといけない。ところが、クライアント企業600社16万人を対象に匿名で調査したところ、実は74%の社員が「残業をしたい」と考えていることがわかった。とくに、20代だけを見れば81%が残業規制に反対と回答しているのである。
上位3つの理由の中で注目すべきは、「スキルアップしたい」からという回答だ。従業員1000人以上の大企業で見ると、4分の1以上が「スキルアップのために残業したいのに、労働時間を抑制されている」ことがわかる。労働時間の「壁」があって、思うようにスキルアップの時間を取れていないと考えているのである。
②「声掛け」の壁
残業規制によってスキルアップの時間が減っただけでなく、先輩から教えてもらう機会も減っているのが現状だ。
以前ならチーム内の先輩の席に行って「いま、ちょっといいですか?」と業務の質問をすることができた。先輩の電話対応を席の隣で聞いて勉強することもできた。しかし、コロナ禍の影響でテレワークが進み、気軽に声を掛けることができなくなってしまった。
先輩などに声を掛けにくくなったことで、孤立した若い世代が塞ぎこんでしまっている。結局は自分で時間をかけて調べ、答えにたどり着くほかないのだが、きわめて効率が悪い。
また、キャリアを形成するうえで重要な「偶然の出会い」がテレワークによって減っている。
出勤していたときは廊下やランチでカジュアルな会話があり、そこで社内の人を紹介してもらったり、思いもよらないプロジェクトの話に遭遇したりした。これまでは、こうした「偶然の出会い」が新たな経験をする機会と成長をもたらしてくれたが、テレワークではそもそもそんな偶然に出会うチャンスが大きく減ってしまう。