メディア側にも「炎上しやすい話」を載せる動機がない

cakesが「ハイリスク」「センシティブ」などといった理由によって連載企画を次々に取り下げる判断は、たしかに書き手側からすれば「やってられない」と不満のひとつも言いたくなるようなことではある。

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個人的にも、かりそめにも表現をしのぎにしている会社なのであれば、センシティブであろうがアグレッシブであろうがアンチポリコレであろうが、それでなにか批判が生じたくらいで動揺せず、超然としているくらいの気概を持ってもらいたいと思っている(その点でいえば「リベラル社会が直面する『少子化』のジレンマ」とか「『#スガやめろ』と大合唱する人たちをこれから待ち受ける皮肉な現実」といった、リベラルで高学歴でアンチ自民党系の人びとがもっぱら声の大きいインターネットで、こうした記事を果敢にリリースしてくれたプレジデントオンラインを尊敬せずにはいられない。これからも炎上に負けず、多様なオピニオンを掲載するメディアとして胸を張っていただきたい)。

しかしながら、メディア側にも少なからず言い分がある。可燃性の高いジャンルをいまの時代にあえて「オープンでフリーなインターネット」で掲載することのメリットがほとんどないことも事実だからだ。カネにもならないセクションでわざわざ炎上するのはバカげている。経営的判断からすれば一定の合理性があるだろう。

「cakesだから叩こう」という風潮ができている

また、このような一連の騒動のなかで「cakesは悪い会社なのだからとりあえず叩こう」という風潮が一部でできあがっていることも無視できない。

今回のcakesの編集部の対応は酷すぎる。
ただ、cakesがこんなに「クリエイターが伝えたいものを載せるために、一定のリスクを受け入れる」ことに及び腰になってしまったのには、最近の「cakes=悪、という先入観にもとづいて、cakesのコンテンツを炎上させることを是とするネットの一部の人々」の影響があると思います。
明らかに「これはひどい、という案件」もあるのだけれど、先日のホームレスの記事などは、媒体が違えば、ここまで批判されなかったのではないか、という気がするのです。
いつか電池がきれるまで『あさのますみさんの連載消滅の件で、「またcakesか!」と思った人たちへ』(2020年12月10日)より引用

メディアを利用する人びとの中には「ノーリスクで叩ける対象を探そう」という目的でメディアをパトロールしている者が少なからずいる。そうした対象を見つけてはSNSで拡散して「炎上」を引き起こす、あわよくば社会的に制裁を加えたり、立場を失わせたりすることまでもを目論む、いわゆる「キャンセル・カルチャー」の仕掛け人となっている。