メジャー史にその名を刻むイチローの3089安打&レーザービーム送球

【メジャーで一番通用した日本人野手は誰か】

しかし、野手のほうも先駆者となったイチローがその不安を一掃した。イチローがシアトル・マリナーズでプレーを始めたのは2001年。それまでの9年間はオリックスでプレーし、7年連続首位打者、日本球界初のシーズン200安打(イチローの記録は210)、通算打率3割5分3厘など数々の記録を打ち立てたが、最高峰のメジャーでも変わることなく打ちまくったのだ。

メジャー1年目はア・リーグ最多の242安打を記録し首位打者。56盗塁で盗塁王にもなっている。打撃だけではない。外野手としても広い守備範囲を誇り、レーザービームと称された強肩で補殺を重ねた。イチローは野手でも日本人選手が通用することを証明したのだ。

そしてその後は野手でも日本人のメジャー挑戦者が次々と現れることになる。

ここで日本人野手のメジャー成績を見ていこう。

当然のことながら、出場試合数も安打数もイチローが群を抜いて1位だ。とくに通算安打数3089は、メジャー歴代23位の記録(※日本通算1278安打で、参考記録の日米通算4367安打はメジャー1位のピート・ローズの4256本を111本上回る)。また、2004年の262安打はメジャー歴代シーズン最多安打記録でもある。イチローは「日本人選手として」ではなく国籍を超えて称賛されるメジャー史に残る選手なのだ。

記録では及ばないが、メジャーでイチローと同等の存在感を示した日本人野手がいる。松井秀喜だ。メジャーきっての名門チーム、ニューヨーク・ヤンキースの中軸を打った功績はもちろんだが、松井はイチローが手にできなかった栄光を手にしている。ワールドシリーズ制覇に貢献し、MVPになったことだ。

2009年、フィラデルフィア・フィリーズとのワールドシリーズに出場した松井は6戦で13打数8安打3本塁打8打点、打率6割1分5厘と大爆発。とくに優勝を決定した第6戦ではワールドシリーズ・タイ記録となる6打点を記録し、文句なしでMVPに選ばれた。野球選手として世界最高の栄誉を手にしたことになる。

一方イチローは、マリナーズに入団した2001年とヤンキースに移籍した2012年にポストシーズンを戦っているが、いずれもリーグチャンピオンシップ(ア・リーグ優勝決定戦)でチームが敗退。ワールドシリーズでプレーすることはできかった。運に恵まれなかったということだ。

野茂、イチロー、松井のBIG3に次いで活躍した日本人選手は?

なお、ワールドシリーズ優勝チームの選手・スタッフにはチャンピオンリングという指輪が贈られることになっており、このリングを得た選手は松井の他、伊良部、井口資仁、高津臣吾、田口壮、松坂大輔、岡島秀樹、上原、田澤、川崎宗則、青木宣親がいる。

このうちワールドシリーズでプレーしたのは井口、松坂(シリーズで1勝をあげた)、岡島、上原(優勝決定試合を締めくくった=日本でいう胴上げ投手)だけ。他は出場せず、優勝に貢献しなかったにもかかわらずリング所持者になったわけだ。この辺にもチーム運の良し悪しが感じられる。

ともあれ、この25年間の実績をチェックすると、抜きんでているのが野茂とイチロー、松井ということで異論はないだろう。この3人ほどではないがMLBで十分活躍したといえるのは、投手では松坂大輔、黒田博樹、リリーフで存在感を示した上原、佐々木、長谷川、現役では田中将大、ダルビッシュ有、前田健太だろう。野手では青木宣親、松井稼頭央、井口、福留孝介といったところ。二刀流でファンの心をつかんだ大谷翔平も入れてもいいかもしれない。