「がんばる」の前提を上司と部下で揃えておく

上司の「がんばる」は、「1日5件お客様を訪問すること」かもしれません。しかし、部下の「がんばる」は、「1日2件」かもしれません。2つ目の例では上司は、「お問合せがあったお客様は80%契約が取れる」という過去のデータを参照して、「契約は取れるだろう?」と言っているのかもしれません。部下は、それをまったく知らないかもしれません。

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報道番組でゲスト同士が議論するケースがあります。先日もある番組で、「日本の公務員の人数が足りないのでは?」ということが議論のテーマになっていました。

あるゲストは、「日本は公務員が足りない。先進国で比較すると圧倒的に少ない」と言い、あるゲストは「公務員は多い。ちゃんとマネジメントすれば少なくて済む」と言いました。

しかし、大事なポイントは、「そもそも公務員の適正数は何名なのか?」ということだと思います。

まず、「私は日本を運営するにあたり、公務員は○名が適正だと考えてます」という前提があって、それに対して、少ないor多いという論陣を張るべきだと思います。

その前提が全員と一致するかどうかは別として、前提がないと、感覚的な話で「多い」「少ない」と、終始平行線をたどることになります。

報道番組は、その場で結論を出すことが目的ではないので問題ないと思いますが、社内ではそうはいきません。その場で何かしら結論を出さなくてはなりません。

上司が言うように「もっとがんばるのか?」、部下が言うように「これ以上はがんばれないのか?」を決めないと物事が進みません。そのためには、「がんばる」の前提を上司と部下で揃えておく必要があります。

話の前提を揃える2ステップ

日本人に「ハードワーク」と言うと、相当長い時間働いているというイメージをいだくようです。1日14~15時間働いているような印象を受けます。

しかし、アメリカ人に、「ハードワーク」と言うと、密度のことをイメージすると言います。ハードワークなアメリカ人に、「1日何時間働いているの?」と聞くと、「え、8時間に決まってるじゃん」と答えるそうです。ハードワークの前提が一致していないと、会話をしていても噛み合いません。

・まずは、前提を合わせること
・そして、建設的に議論を進めていくこと

これが要らぬストレスを抱えない有効策です。ここからは、前提を揃える具体的な方法を述べます。やり方は簡単で、

(1)アバウトなものを書き出す
(2)前提を決める

たったの2ステップです。順に見ていきましょう。