子どもが2歳の時に始まった両親の介護は、10年に

はじめにご紹介するIさんは、父親の主たる介護者は母親だったものの、定期的に愚痴を聞く、買い物をする、手続きをするという形で、母親を支えてきました。

【Iさん(40代女性、フリーランス、子ども20歳、12歳)のケース】

過去10年間、実の両親の介護に関わってきました。父親の認知症がはじまり、母親が主に介護をしていましたが、情報収集や書類の手続きが苦手な母親に代わって、介護申請、ケアマネジャーとのやりとり、成年後見人の申し立て手続き、施設入所手続き、実家の売却と引越しなどを代行してきました。

写真=iStock.com/Yusuke Ide
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自宅から実家までは車で片道1時間程度です。実家に定期的に通うようになったとき、子どもは10歳と2歳でした。フリーランスで仕事をしており、下の子は保育所に通っていましたが、迎えに間に合わないときは近所の友人や、上の子にお迎えを頼むこともありました。

また、母親から毎日のように電話があり、父親の状況や生活の不満を聞きました。父親は、「散歩」に頻繁に出ていってしまって、朝6時でも夜でも行ってしまうから、止めに来てほしいという電話が母親からかかってきました。父親はその後グループホームに入り、4年前に癌で亡くなりました。

父の他界から1年後、母親にパーキンソン病のような症状が出て、歩くことや物を持つことが難しくなり、往復2時間かけて買い物を届けたり、日常を助けたりするようになりました。10年間、母親を訪ねて月に数回、実家との往復が続きました。その母も特別養護老人ホームに入りました。

とくに大変だったのは、父親がグループホームに入るころです。疲れがピークに達して食事がとれなくなったり、過呼吸になったりしていました。あまりに大変で、そのころのことはあまり思い出さないようにしています。

直接的な介護だけが介護ではない

私たちのインタビューに応えてくれた方たちは、次のような体験も、「介護」のエピソードとして聞かせてくれました。

「オンラインで買い物を定期的にして実家に送っている」
「通院の予約をとり、一緒に行く」
「週に1回実家に行って、掃除をしている」
「1日3回電話をして、父親の様子を確認している」
「電話で父親の介護をする母親の愚痴を聞いている」

このような行為も介護と考えると、もしかしたら、より多くの人が「自分もダブルケアラーである」と思い当たるかもしれません。