人材多様化に対応している会社の探し方

DX領域以外でこれから伸びる会社を探すのなら、人材多様化に対応している会社をお勧めしたい。マイケル・オズボーンが示す変化のトレンドに含まれつつも、日本企業が苦手とする領域の変化があり、それに対する対応度合いは、人材多様化への対応度で測ることができるからだ。

それは「グローバル化」と「不公平感の増大」、そして「政治的不確実性」だ。つまり日本人と同じように諸外国出身の従業員を活用し、様々な違いがあってもチャンスを公正に与え、政治的な偏りにおもねらない企業を探すことが望ましい。

戦前から戦後の高度/安定成長期にかけ、日本人は日本人であるということにこだわり続けてきた。ジャパン・アズ・ナンバーワン、という言葉に胸を高鳴らせた人も多かった。

個人としての信条はそれでよいかもしれない。しかしビジネスとして考えるのであれば、もはや日本だけを市場にする会社の将来性は明るいとはいえない。世界市場で活躍することは必須課題なのだ。そして世界市場で活躍するには、それぞれの国のそれぞれの文化を尊重することは当たり前のことだ。

その点、欧米企業が世界に展開した際の対応は優れていた。それぞれの国の法人のトップにはなるべくその国の出身者を据えるか、あるいは本社がある国以外の異なる国出身者をえていった。一方で日本企業は相変わらず海外現地法人トップを日本人に任せている。

また、世界の半数は女性であり、優秀な人材の割合も男性と変わらない。だから女性活躍はあえてとりあげるまでもなく、当たり前に対応すべき事柄だ。しかし日本では戦前の家制度における男性家長の戸主権へのあこがれをひきずり、女性には主婦化を促してきた。

これらを前提に考えるならば、例えば役員や管理職における外国人、女性の比率を見ることは重要だ。またSDGsへの対応から読み取ることもできる。

あなたを高く売るためには、市場より「取引」を目指す

DX対応であっても多様性対応であっても、これから伸びそうな業界の伸びそうな会社は、自分で探さなければいけない。就職とは投資先を決めることだ。ベットするのはあなたのスキルと経験と人生。リターンは外的な報酬、内的な報酬など様々だ。

だからもしあなたが本気でこれからの時代に大きなリターンを得たいのなら、人材紹介会社のマッチングページを流し読むだけでは不十分だ。

平康慶浩『給与クライシス』(日経プレミアシリーズ)

そもそも、そこには就職という投資を求めている会社が掲載されている。伸びるために投資を求める会社の中に、浪費するための投資を求める会社が混ざっている。

そしてもしそこに本当に投資に値する魅力的な会社が掲載されていたとしても、その時点ですでに買い手市場になってしまっている。転職を考えるライバルたちを乗り越えて面接にたどり着いたとしても、あなたにとってはあくまでも人材紹介会社のページに記載されている多くの企業の中で有望に見えた、というだけの言葉しか伝えられない。

しかし自分で探し自分で発見した企業であれば、なぜ興味を持ちなぜここで働きたいと思ったのかを、自分の経験と言葉で語ることができる。人材紹介会社があなたに提供するのはマッチングのための市場だが、あなたが自分で探せばそこでは交渉による取引の場が生まれるのだ。あなた自身を高く売りたいのであれば、あなた自身を市場に並べてはいけない。取引の場で交渉することで、あなたの価値はより高く見えるのだから。

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