2度目の敗北を受けて、維新代表の松井一郎大阪市長は任期満了後の政界引退を表明、吉村府知事は「自分が再挑戦することはない」と明言した。

新聞の出口調査によれば、都構想を党是とする維新支持層の9割は大阪都構想に賛成した。一方で自民党支持層の6割強が反対。立憲民主党や共産党支持層の8~9割も反対で、無党派層も6割が反対だった。維新としては大阪市の4分割案に賛成した公明党の動員力に期待したいところだったが、公明党支持層の賛否は五分五分。投票行動から分析すれば、公明党支持層の半分が寝ていたことが敗因の1つになったようだ。

しかし、1回目の住民投票も2回目の住民投票も、否決された根本的な理由は一緒だと私は思う。要は大阪都構想のメリットというものが市民に理解されなかったのである。

「大阪都構想」は通称であって、今回の住民投票の正式名称は「大阪市廃止・特別区設置住民投票」。住民投票で賛成派が勝ったとしても「大阪府」の名称はそのまま。あくまでも大阪市という270万人規模の政令指定都市を廃止して、4つの特別区(15年の住民投票では5つの特別区)に分割することに賛成か反対かを問うものだった。

賛否が拮抗していた投票前の世論調査で、大阪都構想に反対する最大の理由は「大阪市がなくなるから」だった。歴史と愛着ある大阪市をなくしてまで、4つの特別区に分割するメリットは何なのか。これがなかなか明確に伝わらなかったのだ。

二重行政解消どころかミニ大阪市が4つできる

逆に投票前の世論調査で賛成する理由の1番に挙げられたのが「行政の無駄の削減」である。維新も「二重行政の解消」を都構想の大義に掲げてきた。しかし、二重行政が何を指すのか、その定義は曖昧で非常にわかりにくい。

維新は機能が重複する府立と市立の施設として病院や大学、図書館などを挙げていた。それらを1つに集約することが市民生活の向上につながるかどうかも疑問なのだが、実際にはこの数年で施設の統合や移管が進んで、多方面で二重行政は解消されつつある。

橋下氏が府知事だった時代は、当時の大阪市長平松邦夫氏と犬猿の仲で府市の関係も悪かった。今は維新の会長と会長代行である市長と知事がタッグを組んで選挙を戦う間柄である。「何も大阪市を廃止しなくても、今までみたいにトップ2人で話し合えば二重行政の多くは解消できるのでは?」という素朴な疑問は当然湧いてくる。