「考える力」「伝える力」を育む最初の教材が絵本

「考える力」と「伝える力」が重要であることは日本の教育界も認識しています。

その一例が、大学入試における共通テストへの「記述式」の導入です。

制度上の不安から現時点では棚上げされていますが、文部科学省が「知識偏重」の教育から「思考力重視」の教育にシフトしようとしていることは明らかです。

しかし、「考える力」「伝える力」というものは本来、受験勉強の一環として一朝一夕で身につけられるものではありません。ましてや先生から座学で教わることでもありません。

小さなときから自分で考え、それを伝える経験を積むことでしか身につかないものです。

欧米では、その最初の教材として絵本を使うのです。

実際、アメリカ人の家庭や幼児教育の現場の読み聞かせの様子を聞いていると、次の2つの問いかけが頻出します。

「あなたはどう思う?(What do you think?)」
「なぜそう思う?(Why do you think so?)」

前者は自分の考えをことばとして出させるための問いかけであり、後者はその考えを論理的に整理し、より深掘りさせるための問いかけです。

この2つの問いはセットにして使うことでより効果を発揮します。

問いかけられながら読むと「自分なりの感想」を持ちやすくなる

日本人は「なぜ?」と質問されることが苦手だとよく言われます。純粋に理由を聞かれているだけなのに、なんとなく非難されているような気持ちになる人が多いからでしょう。しかし、欧米では小さなときから当然のように親から聞かれるのです。

もちろん子どもが2〜3歳のうちは「Why?」の問いは難しいですが、4〜5歳になると答えられるようになります。

こうした問いかけをされながら絵本を読むことが習慣になると、いずれ1人で本が読めるようになったとき、話の表層をなぞるだけではなく、「自分なりの感想」を持ちやすくなります。つまり、「考えながら情報に接すること」が癖になる。これが「自分で考える力」の礎になります。

さらに、幼稚園なども含め、アメリカでは絵本の読み聞かせの最中、もしくは終わったあとに、先生が子どもたちにさまざまな問いかけをして自分なりの意見を言わせることが多いものです。

そこで子どもたちに議論をさせるわけではありませんが、子どもたちは自分の考えていることをことばにして表現する訓練をしつつ、人によっていろいろな意見があることを自然と学んでいきます。

これが「伝える力」の発達につながるのです。