“パワハラ”と聞くと、一般的には上司から部下へのハラスメントのイメージが定着しています。しかし、ハラスメント問題に詳しい弁護士の井口博さんは、「実は『モンスター部下』による逆パワハラが非常に多いんです」と指摘。モンスター部下の恐るべき実態とは——。

※本稿は、井口博『パワハラ問題』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

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パワハラ被害は上司・部下ともに同じ比率で発生

「我々こそパワハラ被害者だよ」——多くの管理職の実感だろう。このことは厚労省の2016年度の実態調査でもはっきり出ている。

過去3年間で、被害者つまりパワハラを受けたことがあると回答した男性管理職は36.7%、女性管理職は36.4%であった。同様の回答は、男性正社員全体で見ると34.8%、女性正社員全体で見ると35.1%だったから、管理職と正社員全体とでその比率はほとんど変わりがない。

管理職は日ごろから「パワハラをするな」と会社からさんざん言われていて、そのための研修を受けている。しかし実際は、被害者となる比率は管理職と管理職でない社員とで変わらない。

泣き寝入りする上司が多い

さらにこの調査では、過去3年間にパワハラを受けたと感じた者に対してその後の行動として何をしたかという質問をしたところ、何もしなかったと答えたのは、男性管理職が59.6%、女性管理職が39.1%であったが、正社員全体では男性正社員が48.4%、女性正社員が29.3%だった。これは管理職の方が管理職でない社員よりも泣き寝入りしているケースが多いことを示している。

この「泣き寝入り」も管理職の実感だろう。パワハラを受けても、管理職ならそれくらい自分でなんとかしろと言われるのではないか、管理職不適格と思われるのではないかなどと考えてしまって声が出せないのである。

このようなことからすると、管理職には加害者にならないようにとの研修と合わせて、被害者としての研修もしっかりとすべきだということになる。