(3)組織のなかにナレッジ・コミュニティを築く

多くの組織で知識はもっぱら「専門家」の手中にあり、彼らは会社を去るとき、その知識も持ち去ってしまう。適切な協働ツールは、専門家の情報や知見をつかみとり、彼らのまわりにコミュニティを築く手助けをして、彼らの知識をコミュニティの知識に変えることができる。

それを実現する簡単な方法の1つが、会社の主要な専門家のインスタント・メッセージ(IM)のやりとりを保存し、集積することだ。概して知見に満ちているこれらのやりとりは、コンピュータの画面から消えたとたんに普通は失われてしまう。しかし、新しいツールはそれらをつかみとり、いつでも取り出せるようにすることで、それらを通じて伝えられる知識が社内に残るようにしてくれる。

(4)「パフォーマンス・シミュレーション」を採用する

eラーニングは社員の訓練に革命的な変化をもたらした。学習は教室という舞台で「公式に」行われる場合にかぎり成功するという閉鎖的な考えから企業を解放し、質の高いコンテンツを常に提供できるようにして、いつでも、どこでも学べる学習者主導の学習を可能にした。

とりわけパフォーマンス・シミュレーションは、きわめて効果的な学習テクニックであることが実証されている。実務に近い環境──ルールに従ってフィードバックが与えられ、それにもとづいて矯正していける──のなかで課題を修了することで、学習者は知見と評価と指導を得ることができる。

学習者は専門家の「奮闘物語」やものの見方、具体的な参考資料、業界のベスト・プラクティス、練習問題へと導かれ、それらを学習し、応用しながら課題を修了する。

これらの内容のすべてが、学習者がそれを学ぶ準備ができたちょうどそのときに──試行錯誤の時点で──入手できるようになっている。

たとえばシーメンスでは、収益性を高め、より迅速に変化に対応するために、世界中の社員が共通の財務用語を使えるようにする必要があった。同社は、財務・管理部門の1万人の社員のために作成された48時間シミュレーション体験プログラムを使ってこれを実現した。

テクノロジーとグループ活動を組み合わせて、これらの社員に、国内市場中心の単一製品企業を複雑なビジネス決定に直面するグローバルな産業組織へと成長させるという挑戦をシミュレートさせたのである。

社員たちはまずエクササイズで、財務アナリストや財務マネジャーやプロジェクト・コントローラーの役割を演習した。次にビジネス検討ミーティングで、先のエクササイズで得た知識を参考に、チームごとにケース・スタディを行った。

その結果、シミュレーションを終えたときには、彼らは共通の言語が緊急に必要であることをより深く理解し、その言語自体もより確実に使いこなせるようになっていたのである。

(文=D・ボース、D・Y・スミス 翻訳=ディプロマット)