「“オバサン”を悪口だと思ったのはなぜ?」

【太田】子育ての中で気になった発言や、それに対して小島さんが伝えたことはありますか。

太田啓子『これからの男の子たちへ「男らしさ」から自由になるためのレッスン』(大月書店)

【小島】家庭内では常に性差別的な発言をしないよう注意していますが、保育園とか学校に行くようになれば当然、いろんな偏見に染まってきますよね。保育園の年中くらいで「ピンクは女の子の色でしょ」と言いだしたり。小学校に入ると今度は「オバサン」という言葉を悪口として使いはじめる。「ママはオバサンじゃないよね?」とか。なるほど、侮辱の言葉として「オバサン」を学習してしまったんだなとわかったので、「いまだ!」と思って(笑)。

【太田】(笑)

【小島】「オバサンというのは人の状態を指す言葉で、ママも30代後半の女性だからオバサンです。でもそれは状態だから良くも悪くもない。だけど君は“オバサン”を悪口だと思ったんだね。それはどうして?」「年齢を重ねることは悪いことではないのに、歳をとった女性は若い女性よりも劣る存在だと、君は言ったことになるんだよ」と。小学1年生にわかる言葉を選んで、じゅんじゅんと説きました。

【太田】素晴らしい。

無邪気で無意識な性差別、疲れるけど見逃さない

【小島】中学生になると別のフェイズが来て、つまり女性の性をモノとして扱う価値観がインストールされはじめる。アートの授業で、写真やモノをコラージュして作品をつくる課題があったんです。長男が、友達とふざけてこんなの作ったんだよと見せたのが、女性の股間の部分に標的のマークを貼り付けたものでした。息子は、単なる友達どうしのおふざけとして話したんですが、「私はこれはすごく嫌だ。君たちが女性の体をモノ扱いしておもしろがっているのが不快だし、怖い。性器の位置に標的マークを貼り付けるって、どういうことかわかっているのか。暴力的で、女性の尊厳を傷つける表現だと思う」と、やはりじゅんじゅんと説明しました。

【太田】そういうのは無邪気にやってるんですよね。

【小島】そう。性差別的なバイアスって、無邪気で無意識なところにみごとに滑り込んでくるから油断ならない。

【太田】そういう教育って、一般論として体系的にできるわけではないので、日常の中で飛び込んでくる発言やできごとをすかさず捉えて、その都度やるしかないですよね。常にアンテナを張っていると、気が抜けなくて疲れますが。

【小島】疲れます(笑)。でも、しょうがない。

【太田】やるしかないですよね。