“白人クリスチャン”からの熱烈な支持

今は「オバマのアメリカ」の時代である。黒人大統領が生まれる多様性を認めるアメリカで、SNSを通じて繋がり、みんなで協力し合うことが善しとされる時代だ。そんななかで「昔はよかった」という意味の「MAGA」は時代遅れに聞こえる。

だが、トランプの主張は「オバマのアメリカ」からこぼれ落ちた2つのグループに向けたものだ。1つは共和党の中でも保守派と呼ばれる、建国の精神であるキリスト教的価値観と自衛のための銃を重視する人たちだ。2つ目はアメリカの経済成長に貢献した工業地域、今ではラストベルトと呼ばれる地域で働く元民主党系の労働者である。

両者には白人クリスチャンという共通項がある。アメリカを開拓した「建国の父」たちの血を受け継ぐ人々だ。ラストベルトと呼ばれる五大湖周辺の工業地帯が華やかだったのは1970年代以前である。1970年代までアメリカは90%近くがヨーロッパからやってきた白人クリスチャンの国であった。その時代を引きずる人々がトランプを熱烈に支持している。

2016年大統領選挙では穏健派の共和党員までもが、「トランプ支持者と聞くと、この人って人種差別主義者? と疑いの目を向けてしまった」と密かに話していた。実は、同じ共和党といっても保守派と穏健派ではかなり色合いが異なる。保守派はキリスト教的価値観と銃という建国の精神に関わる国内政策全般への関心が高いが、穏健派はそれほど関心がなく、経済政策や外交姿勢に共鳴して共和党を支持している。

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「トランプ支持者=人種差別主義者」という共通認識

トランプを自らの大統領候補として担ぐ共和党で、このように思われているのだから、民主党支持者はもとより、無党派層はなおのこと「トランプ支持者=人種差別主義者」という共通認識ができあがる。

ましてや今はミレニアル世代が主役の「オバマのアメリカ」時代である。多様化するほどに白人クリスチャンは減少する。国勢調査では2000年代までプロテスタント、カトリック、ユダヤ系は別のグループに分類されていたが、今は3つを合わせて「白人」とカウントされている。2015年時点で、その「白人」は61.8%だ。国税調査によると2018年に生まれた子供は白人が51.6%、ヒスパニックが23.4%。黒人が14.6%であった。

移民は白人以外が多いので、月日が経つほどに白人の割合は減っていく。ピュー研究所は「2050年には白人の割合は47%になる」と予想している。ますます「トランプを支持するとは言いにくい」土壌ができあがっているのだ。