発達障害の診断はとても微妙で難しいもの

私は納得して大きくうなずきました。小学校に上がれば、療育はいったん卒業になります。お母さんが希望すれば、放課後等デイサービス(放課後デイ)というものを利用することができます。今のところ、放課後デイを使うかどうかは夫婦でまだ話し合っていないそうです。

松永正訓『発達障害 最初の一歩』(中央公論新社)

それでいいのではないでしょうか。カッ君が小学生になってから、ゆっくり考えればいいことでしょう。言葉が出ず、多動だったカッ君も小学校入学を控えて、ほとんど普通の会話が可能になり、椅子にも座っていられるようになりました。発達が上手ではない部分も少しあるようですが、それくらいは個人差のように見えます。これなら、ご両親は安心してカッ君を小学校に送り出せるでしょう。

今から振り返って見ると、カッ君には発達障害の特性が間違いなくあったと思いますし、今も残っています。しかしそれは自閉スペクトラム症と診断名を確定させるレベルではありません。発達障害の診断はこのくらい微妙で難しいのです。いえ、診断は急いで付ける必要はありません。子どもの成長にかかりつけ医が伴走し、小学校に上がるくらいまでにゆっくりと診断を決めていけばいいのです。

ご両親がカッ君の特性をよく分かった上で小学校生活を送らせてやれば、あんがいうまく行きそうです。私も、もう少しお手伝いをしようと思いました。

関連記事
"期待した子の死"に悩む障害児の親の半生
「自閉症は津軽弁を話さない」この謎に挑んだ心理学者が痛感したこと
なぜ日本の学校は「発達障害の子」に冷たいのか
「円周率とは何か」と聞かれて「3.14です」は大間違いである
3割が亡くなる「小児がん」という不条理