デザインは球体四角い回路基板をどう詰め込むか
クリアすべき課題はまだまだあった。例えば、新製品のデザインだ。睡眠時に使うので、スチーマーはベッドや布団の脇に置く。いくつか試作模型をつくってユーザーに見てもらったが、「大きすぎる」「かわいくない」「安定感に欠ける」といった意見が出た。そのなかで太田さんが温めていた、あるデザインが「かわいい」「おもしろい形」などと支持された。
それは球体だった。今度は、技術者が困った。
「回路基板など、家電製品に使われている部品の形状は四角。部品レイアウトがもっとも難しいのが球体です。しかも、スチームとナノイーを発生させるデバイスが優先される。最終的には、通常なら一枚でいい四角い基板を三分割で配置して、なんとか球体に収めました」(パナソニック電工ビューティ・ライフ事業部ビューティ商品開発グループエステ商品開発主担当・藤原充氏)
安全性については、あらゆる想定の下で確保しなければならない。
「例えば、スチームの温度です。寝ているときに、万が一、噴き出し口に顔が近づいても火傷しない温度にしなければなりません。そこでファンを回してスチームの温度を下げることにしました。睡眠を妨害しないように静音性の高いファンにしています。もちろん、スチーマーが倒れたときは自動的に停止する。睡眠中に使う製品だけに、検証項目数は140と通常のスチーマーよりもかなり増えました」(藤原氏)
こうして苦労して完成した試作品だが、美容効果がなければ製品化はない。
「ナイトスチーマーを使った人と使用しなかった人の肌を2週間後に比較しました。ナイトスチーマーを使った人の肌は、肌の潤いが維持されていて効果があった。数値としても実証されたんです」(同技術開発グループ技師・エステ評価開発担当・岸本篤子さん)
07年も暮れようとしていたころだった。担当役員の決裁が下り、製品化が決定した。発売時期は、冬場で肌が乾燥する時期に合わせて08年11月となった。
発売まで1年もない。5000台の月間販売台数は、前評判がよくて1万台に変更された。発売後は、ネット上などで口コミでも広がり、大ヒット商品となった。