自己開示し合う関係性のなかには“信頼”が含まれている

それをずっと進めてきた店では、お客さんが来店すると、自分のことをどんどん話す。そんなことまで話していいのかと心配になる場合も珍しくない。店主が質問したわけでもないのにあけっぴろげにしゃべるのは、そこに関係性があるからだ。そして、ここでの関係性のなかには、“信頼”という重要なものが含まれている。実際これらのお店のお客さんらは口々に、「この人なら他言しないだろう」「いつも話をちゃんと聴いてくれる」「頭から否定してかかることはしない人」「話すだけで救われる気がする」などと語る。そういった信頼が醸成されているのである。

とはいえ、お店とお客さんとは言ってみれば他人同士、単なる「売り買い」だけでも済む関係だ。そこでそれだけの強固な信頼が醸成されるのなら、チーム内ではどうだろう。

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「お互い弱い部分もさらけ出すことができる関係性」をいかにつくるか

今日、チームマネジメントの世界で最も重要とされるものは、“心理的安全性”と言われるものだ。人事系や人材開発系・組織開発系のカンファレンスなどでは、この概念がほとんど毎回のように語られるゆえ、読者諸氏も耳にしたことがおありだろう。かのグーグルが数億円の予算を投じて行ったと言われるリサーチでも、チームの効果性を高めるための最も重要な要素と位置付けられている。ちなみにグーグルのリサーチ結果においては、心理的安全性は、「チームメンバーがリスクを取ることを安全だと感じ、お互いに対し弱い部分もさらけ出すことができる」ものだとされている。この重要性には異論がないが、問題は、その心理的安全性をいかにしてつくるかである。

ここでカギとなるのが先ほどの「自己開示」だ。お店とお客さんの場合では「信頼」と言っていたが、上司と部下の場合、その信頼は「心理的安全性」に通ずる。

お店とお客さんとの間につくられる信頼を、チームの内部に置き換えてみよう。先ほどのお客さんらの言葉を上司に対して置き換えると、「この人なら何を話しても大丈夫だ」「頭ごなしに否定されない」「ちゃんと聴いてくれる」といった信頼が考えられる。自分の発言が採用されるかどうかは問題でない。否定されずに受容されるかどうか。それは心理的安全性に通ずるものだ。

心理的安全性をつくり出す要因となるものは他にも挙げられるが、自己開示の必要性は意外に見落とされているのではないか。また、自己開示情報すなわちプライベートな情報であるがゆえに、それをビジネスの現場でどの程度出してよいものか指針がないのかもしれない。