>>柴田励司さんからのアドバイス
40代になるとリーダーの役割を担う人が多くなる。その際に留意すべきなのは「権限では人は動かない」ということだ。私が人事コンサルティング会社の社長に就任したのは38歳のときだったが、就任してすぐに手ひどい失敗を犯してしまった。私より年上でコンサル経験も豊富なスタッフがたくさんいたのだが、「社長の命令は絶対だ」と、まさに権限を盾に彼らを動かそうとしてしまったのだ。
結局、総スカンを喰らい、当時の秘書に叱られて初めて気づいた。この経験から、リーダーはいわば飲み会の幹事役であり、メンバーに気持ちよく働いてもらうための場づくりに腐心すべきだと悟った。メンバーを権限で引っ張ろうとせず、いかに気持ちよく働いてもらえるかに気を配る。そうしていると、不思議なことに組織は自然に最適な方向へ動いていくものだ。
30代でリーダーになる人は極めて優秀で、目から鼻に抜けるような才気煥発ぶりを発揮している人が多いはずである。30代はそれで通用するかもしれないが、40代になってさらに規模が大きい組織を任されるようになったら、折に触れ、自分自身を謙虚に反省する態度を身につけたいものだ。
「自分が会社で一番優秀」などと勘違いをしている人は、得てして自分よりポジションが低い年上の人や、能力が劣っている人に対する態度が尊大になる傾向がある。私の場合、勘違いを指摘してくれた秘書にいまも感謝している。取り返しがつかないことになる前に、ときには厳しく意見してくれる人を身近に置くことが大切だ。
シグマクシス代表取締役CEO●倉重英樹
1942年、山口県生まれ。早稲田大学卒業後、日本IBM入社。93年副社長。PwCコンサルティング会長、日本テレコム社長等を経て、RHJインターナショナル・ジャパン会長(兼務)。08年シグマクシスを設立。三菱商事特別顧問。
カルチュア・コンビニエンス・クラブCOO●柴田励司
1962年、東京都生まれ。上智大学卒業後、京王プラザホテル入社。在オランダ日本大使館出向、人事部、マーサー・ジャパン社長、キャドセンター社長を経て、08年より現職。デジタルハリウッド社長を兼務。週1回配信するメルマガ「柴田励司の人事の目」が好評。