時限爆弾を抱えたヨーロッパ市場

しかし、安心するのはまだ早い。危機はまだ終わっていないからだ。

昨年は、アメリカでリーマン破綻という時限爆弾が爆発した。今年は大西洋を越えて、ヨーロッパで時限爆弾が爆発するかもしれないのだ。

アメリカ発の金融危機が起きて以来、ヨーロッパ各国でも中小金融機関が相次いで破綻し、大手金融機関が経営危機に陥った。そこで各国政府は、アメリカ政府に先んじていち早く協調利下げに踏み切り、公的資金による資本注入などを行った。

ヨーロッパ発のニュースの少ない日本にいると、各国の迅速な行動によって、ヨーロッパの金融機関はアメリカよりも安定していると思いがちだ。だが、状況はアメリカ以上に厳しい。

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ヨーロッパ分野別ABS AAA格/ヨーロッパ分野別ABS A格

そこでグラフを見てほしい(図参照)。ヨーロッパの分野別ABS(資産担保証券)のトリプルA格とシングルA格の価格(スプレッド)の動きを示したものだ。自動車ローン、CMBS(商業用不動産担保証券)、クレジットカード、中小企業向けローンのいずれもスプレッドが上昇している。スプレッドが上がるほど、ABSの価格は下がることを意味しているので、状況はかなりのスピードで悪化していることがわかる。

これらのABSは、サブプライムローンのように低所得者向けの問題債権の証券化商品ではなく、「普通」の人たち向けのローンや自動車ローンを証券化した商品だ。「普通」であるからこそ、大きな問題がある。

アメリカのサブプライム問題では、もともと問題のあったサブプライムローンという特殊な債権が証券化され、複雑な金融取引を行うことで、その問題は覆い隠され、増幅された。これが爆発して世界を震撼させたのだが、問題点そのものは容易に特定できた。

しかし、ヨーロッパのABSは金融技術云々といった話ではなく、「普通」の証券化市場そのものから資金が引いてしまっている。そのため下落が止まらない状況にある。それが問題なのだ。