韓国には30~40代で結婚していない女性が約138万人いる。これは10年前に比べて2倍で、急増している。『韓国の若者』(中公新書ラクレ)を書いたライターの安宿緑さんは「主な原因は、女性抑圧への反動と若者の貧困だろう。この風潮は加速していて、『非婚主義』を訴える団体も台頭している」という――。
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非恋愛、非SEX、非婚、非出産の「4B運動」

韓国統計庁が8月26日に発表した出生率統計によると、2018年の韓国の出生率は0.92人となり、歴代最低記録を更新した。

特に20~30代の出生率が大きく減っており、韓国の若者が置かれた社会・経済状況を如実に表している。

現在、20代女性を中心に起きている「非恋愛、非SEX、非婚、非出産」の「4B運動(「B」とは「非」を韓国語で発音した際の音、ピまたはビを示す)」もその一端を表すものだ。最近ではそこに「非消費、非婚者が非婚者を支えること」の2Bと「脱コルセット、脱オタク、脱アイドル、脱宗教」の4T(「T」とは「脱」を韓国語で発音した際の音、タルを示す)を加えた、「6B4T」にまで発展したとされる。

韓国の若者の非婚傾向の外部要因としては、伝統的家族観と産業構造の変化、女性の教育水準の向上などが原因であることが知られている。

全国の満20歳から44歳の未婚男女2380人を対象にした韓国保健社会研究院の調査資料、「2015年全国出産力と家族保健・福祉実態調査」に基づいた、非婚の外部要因についての研究では、対象者の約80%が「非自発的」非婚に属していた。うち最も多かったのが「機会喪失型」で、その次が「結婚費用負担型」であった。さらに細かく言えば、男性では「結婚費用負担型」が多く、女性では「不利益負担型」が多いことが分かった(「成人男女の非婚類型に影響を及ぼす要因:社会人口学的特徴および家族価値観要因を中心に」カン・ユジン、2017)。

「女性抑圧へのバックラッシュ」×「若者の貧困」

これは現在の韓国における家族制度が「結婚と仕事によって生じる負担を、男性側以上に女性側へ強く与えている」結果として、得られる不利益も男性側より、女性側で大きくなっている状況を意味する。

男性の多くが経済的要因によって非婚にならざるを得ない状況に対し、女性は外部要因にかかわらず、自ら非婚を選んでいることを示唆しているのだ。

整理すれば、そもそも生じていた「女性抑圧へのバックラッシュ」に「若者の貧困」が重なり、女性を中心としてさらに加速した、と言えるのかもしれない。

もちろん男性の非婚者も増えているが、韓国統計庁によると2015年の30~40代の女性非婚(未婚)者は138万4047人。2005年は66万3513人であり、10年間で倍近くに増加している。

韓国における非婚は90年代から2000年代にかけての女性解放運動、戸籍制度廃止による家族のあり方の見直しなどと密接に関連してきたが、とりわけ2015年からはインターネット上でのフェミニズム論争を機に、その性格がイデオロギー化、先鋭化してきたといえる。

フェミニストによるサイト「メガリア」の台頭から堕胎罪廃止運動、「MeToo」運動などの勃発、一方で江南駅での女性殺人事件(2016年)や「N番部屋事件」(2020年)に代表される女性嫌悪の高まりもそこに拍車をかけた。