「非婚女性の保護壁」になるグループ

フェミニズムと結婚に関する論争は日本のインターネット上でもよく見られる光景であるが、日本と異なるのは、韓国では非婚主義を自ら標榜する女性がグループ単位で公的に活動しているという点だ。

そこで筆者は実際に非婚主義者の生の声を聞くため、2019年4月にソウルで結成された「emif」に接触を試みた。

団体名称は「be the Elite without Marriage, I am going Forward」の頭文字からなり、意訳すると「結婚をしなくても私はより良く、前向きな人生を歩む」といったところである。団体はカン・ハンビョル氏(33歳)を中心とし、他の活動を通じて出会い意気投合した他4人の女性が共同代表を務めている。現在の会員数は80人前後、活動会員は550人ほどだという。活動はワークショップや討論会、スポーツなどのレクリエーションによる交流を主体としている。

「emifは2019年2月、非婚女性の保護壁になるものが必要であると考えたディレクターが集まり、その青写真を描いたところから始まりました。それまでは非婚という生き方が可視化されておらず、特に女性がそれを選択することに対する、社会の批判的な視線を強く感じました。そこで、非婚とは決して珍しいことではなく、自分が自分らしく、自分自身に対し最も集中できる生の一形態であることを提唱し、同じ志を持つ友人達としっかりとした支持基盤を造りたい友人たちとしっかりとした支持基盤をつくりたいと考えました」(emif広報)

結婚をしないと「異常な女」と言われてしまう

会員集めは、それぞれの友人に声をかけていくことから始めた。

「共同代表らがそれぞれの親しい友人に、われわれが夢見る団体はどんなものであるかというビジョンを説明し、一緒に作り上げていかないかとプレゼンをしました。1期の会員はそれに賛同してくれた人々で、半年後の2期の募集時には1期会員の知人と、紹介者なしでも入れる2つの窓口を設置しました」

同団体は、非婚の意思を持つ女性たちが連帯する意義について次のように話す。

「今の韓国では、結婚をしない女性は『異常な女』であるという烙印を押される場合もあります。そればかりでなく、韓国は出生率低下の原因は非婚女性たちにあるという認識が強いです。このような状況下で、非婚を選択する女性たちは『私だけがおかしな人間なのではないか』と自分を疑い、疲弊することになります。そこで、自分と同じような人間がそばにいる事実を知れば、否定的な考えに陥るのを避けることができるでしょう。同じ意思を持つ仲間と連帯することで一緒にどんなことをできるか、また試せるかという肯定的な価値観を持てるようになるのです」