「スーパーシティ法案」緊急事態宣言解除の直後にこっそり可決

そこで出てきたのが「スーパーシティ」構想(※)という法案だ。

※「スーパーシティ」構想とは、AIやビックデータなどの最先端技術を活用して、国民が住みたいと思うよりよい未来社会を先行実現する「まるごと未来都市」のショーケースを目指すもの。様々なデータを分野横断的に収集・整理し「データ連携基盤」を構築し、地域住民等にサービスを提供することで、住民福祉・利便向上を図る都市と定義されている。

遠隔医療とか完全キャッシュレスとか自動運転とかゴチャゴチャ言っているけれど、これは要するに、自治体ごとグローバルキャピタリズムに組み込み、人の意志なんか関係なく経済合理性だけで都市づくりをするというもの。

写真=iStock.com/RoschetzkyIstockPhoto
※写真はイメージです

大阪あたりが真っ先に手を挙げそうだけれど、このスーパーシティ法案が緊急事態宣言解除の直後に、こっそりと参院本会議で可決されているのにはわけがある(2020年5月27日、「スーパーシティ」構想を含んだ国家戦略特別区域法等の改正法案=スーパーシティ法案が成立)。コロナ禍に遭って崩壊の危険性を察知したグローバルキャピタリズムの焦りの表れだ。

富裕層の思惑のみでいろいろなことが決まり経済格差は拡大必至

コロナによってグローバルキャピタリズムの前提であるヒトとモノの移動がリスク要因になったので、一時期に比べればよくはなったけれど、中国からモノが来なくなり、いろいろなモノが値上がりしたり流通が滞ったりしている。

それは、これから世界的なヒトとモノの出入りが不自由になっていく可能性があるということだ。それで、リモートで儲けることを画策しているわけだ。

日本人の感性としては、国民全員が貧乏になるのはわりと平気なんだよね。すでに日本はグローバルキャピタリズムによってそうなっているわけだから。30年ほど前までの日本はまだ一億総中流で、金持ちのレベルもそこまでじゃなかったけれど、安倍晋三が首相に返り咲いて以降、トップクラスの金持ちの資産が約3倍から5倍に増えている。

池田清彦『自粛バカ』(宝島社)

たとえば、ソフトバンクグループ社長の孫正義とファーストリテイリング社長の柳井正の資産は第二次安倍政権が成立したころ(2012年12月)、孫は5700億円、柳井は8700億円だったが、今はどちらも約3兆円である。トップクラスの金持ちだけがむちゃくちゃ儲かっている。

コロナ後の世界ではさらにごく一部の金持ちとその他大勢の貧乏人というふうに階級が分かれていくかもしれない。スーパーシティ構想が進めば住民の声ではなく富裕層の思惑のみでいろんなことを決めるから、いま以上に階級間の格差が広がっていく。そういうシステムをつくろうとしているわけだ。

そうなったとき、日本人はいつものように自然現象とあきらめて富裕層の言いなりになるのか、それとも江戸時代の百姓一揆や打ち壊しのように反旗を翻し、社会をひっくり返そうとするのか。自分の家族、郷里、母校などに対する愛着から発した、本来の土着の攘夷思想は、はたして日本人の心にどれだけ残っているのだろうか。

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