20代の長男に向けて上司がかけた、一見励ましのような残酷すぎる言葉
長男は大学卒業後、一人暮らしをしながらIT関係の会社で仕事をしていました。仕事量がとても多く、毎日残業、土日出勤は当たり前のような状態でした。目の前の仕事に忙殺される日々を送っていた長男が28歳になった頃のこと。仕事のプレッシャーや人間関係のストレスが重なったためか、体に異変が起こるようになってしまいました。
頭の中にモヤがかかったような感じがして、パソコンの画面や書類を見ていてもその内容が頭に入ってこない。重要な仕事の話をしているのにその内容が理解できない。立っていると体がフワフワと浮いている感じがする。理由もなく涙が出てくる。体がだるい、重い。そのような状態が続いたので、仕事のパフォーマンスは大きく低下。
やがて職場内でも問題視されるようになってしまい、それを見かねた上司が、長男を会社近くのメンタルクリニックへ連れて行きました。
医師からは「ストレスが関係しているかもしれない」と言われ、しばらく休養を取るようにアドバイスを受け、軽めの精神安定剤を処方してもらいました。
クリニックから会社へ向かう帰り道。不安な気持ちでいる長男に、上司は信じられないような言葉を浴びせかけてきました。
「うちの会社は人手が足りていないのは分かっているよな? ちょっとくらい体調が悪くなったからといって、仕事を休むなよ。お前より体調が悪くても頑張っているやつはたくさんいるんだからな」
「軽い励まし」のつもりの言葉が傷を深くする
もしかしたら、上司は長男のことを貴重な戦力として評価していると言いたかったのかもしれませんし、軽い励ましのつもりだったのかもしれません。しかし、その発言で「くぎを刺された」と感じた長男は通院と服薬を続けながら無理して仕事をすることにしました。しかし1年ほどで体調は大きく悪化。とうとう休職せざるを得なくなってしまいました。
休職中は傷病手当金をもらっていたので、生活費は何とかなっていました。当時の長男には結婚を約束した彼女がおり、彼女の仕事が終わった後や仕事が休みの日には日常生活のサポートをしてもらっていました。
しかし、彼女との関係も長くは続きませんでした。休職中で収入が減ったことや将来の不安から言い争いが絶えず、とうとう彼女から一方的に別れを告げられてしまったのです。
そうこうしているうちに、傷病手当金の受給が終了。復職するか退職するかの決断を迫られるようになってしまいました。体調が優れなかったため、やむなく退職を決意。職を失い、年収約500万円も消えた。一人暮らしのため貯金も微々たるもの。体調は万全とは言えず、彼女にも見捨てられ、孤独と不安は増すばかり……。
そんなある日、あまりの息苦しさに、ふとわれに返ると、自分の首を電気コードで強く締め続けている真っ最中の自分がいることに気が付きました。無意識のうちに自殺を図っていたようなのです。そのような自分に恐怖を感じ、長男は両親の住んでいる実家へ戻ることにしました。
長男が実家へ戻ってくるまで、両親は長男がそこまで追い詰められているとは全く知りませんでした。大きなショックを受けた両親は、長男を自宅で見守ることにしました。