藤井聡太「自分に足りないことは何かを知り、それを高めていきたい」
そしてプロ4年目の今、プロ棋士として何を強く意識しているのか。
「自分の強みを生かすというより、常に自分に足りないことは何なのかを知り、それをどう高めていくかを重要視しています。将棋の場合、コーチのような人はいないので、どうやったら強くなれるか、自分で考えて試行錯誤しています。将棋は勝つか負けるかなので負けが続くことも当然あります。まずは、負けが偶然なのか、自分のパフォーマンスに原因があるのか考えます。次に、対局へのモチベーションを下げず一定に保つことを考えます」
電車や地理が好きで、移動にはいつも新幹線を利用する藤井。「車内では、昔から集中力を高めたり、対局を冷静に振り返ったりする」という。
10歳から大阪の奨励会に地元・愛知から新幹線で通う際などに付き添ってくれた母親は、藤井のそんな「ひとり時間」を決して邪魔しなかった。
「対局で負けたときも、母は『なんで負けたの?』と言うことはなく、ふだん通りに淡々と接してくれました。母に限らず家族が、結果を受け流してくれたことは自分にとってはよかったです。(結果は)本人が一番気にしていますから」
今回の三浦九段との公式戦は惜しくも敗れた。終局直後、戦いの余韻で顔は紅潮していたが、表情は清々しかった。
「(和服姿での公開対局など)初めてのことばかりではあったんですけど、いい経験になったかなと思います。この経験を生かして、またこの場に戻ってきたい」と語った。
小さい頃に身につけた、敗北を「力に変える能力」こそ、天才の最大の武器なのかもしれない。(文中敬称略)