税金に関しては、新型コロナによるダメージが大きい段階での増税は考えにくいでしょう。麻生太郎財務相は20年5月29日の閣議後記者会見で、新型コロナウイルス対策で国債を増発するなど悪化が懸念される財政への対応について「増税に頼るのではなく、景気回復によって税収が伸びることを目指す」と述べています。東日本大震災では当時の民主党政権が復興増税を行いましたが、今回は増税に否定的な考えです。

麻生財務大臣は「増税ではなく、景気回復での税収の伸びを目指す」と言うが……。(朝日新聞社/時事通信フォト=写真)

しかし、政府が大規模に国債を発行しており、借金を背負っているのは事実で、その回収を行うためにも増税は避けられません。上記で見てきたとおり、雇用やGDPの回復に約5年以上を要するとすれば、回復を見ての増税の可能性が高い。89年4月に消費税3%が導入され、97年4月に5%、14年4月に8%に引き上げられ、19年10月に10%と、増税の導入は景気回復期とすり合わせながら非常に慎重に行ってきました。次回の増税も景気回復期を見計らっての導入となるでしょう。

日本を救う「倍返しの法則」

家計については、今までの海外消費分が国内での消費に移る時期が続くでしょう。19年12月末の家計の金融資産残高は1903兆円で、現金預金でも1000兆円を超えています。経済の見通しの悪化や将来の増税に備えて家計は貯蓄傾向にありますが、貿易輸出が減少し、インバウンドが見込めない今、「Go Toキャンペーン」などで、家計をいかに目覚めさせるかが、日本経済復活の「カギ」となります。

企業については、労働投入量を制限する中で、生産性と利益率の向上を迫られています。生産性の向上に関しては、コロナ以前より、日本の課題として大きく横たわっている問題です。ただ、日本ではDXの目的を生産性の向上に置いていますが、米国の優良企業は顧客の体験の向上に目的を置いています。日本も一歩先の「顧客」に視点を置いたDXを進めるべきです。

最後に、不況の副産物としてアメリカで定着したものが「直接金融」です。金融機関の体力が低下しても、資金調達が必要な企業は存在しており、企業が投資家から直接資金調達を行う様式で、これによって不況化でもイノベーションの成長を守ることができます。日本でも、株式投資型クラウドファンディングを通じて「家計」から「企業」に直接投資するスキームが15年に整備されており、この市場の拡大は日本経済の下支えのカギとなります。

日本が今まで成し遂げられなかった、進化を遂げる最後のチャンスなのかもしれません。一方で、インバウンドの復活、DXの推進、クラウドファンディングの定着が成し遂げられれば、コロナで日本経済が失った雇用や成長を「倍返し」で取り返せるかもしれません。

厳しい状況だからこそ、変化への対応力を見せた企業には「倍返しの法則」が当てはまります。外食産業のダメージは大きいですが、日本マクドナルドHDは「驚異の一人勝ち」をしています。株価はコロナ前よりも高い水準にあり、「倍返し」株価です。世の流れを察知し、変革を進める企業は優秀な危機対応力を示せるのです。

(撮影=横溝浩孝 写真=朝日新聞社/時事通信フォト)
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