あまりに強すぎる小池百合子

こうした選挙では、論戦は低調にならざるを得ない。「危機管理」を前面に打ち出すことで、現職の強みを最大限に生かしたともいえる。立憲民主党関係者によると、5月下旬に実施した都知事選の情勢調査では、蓮舫副代表や、れいわ新選組の山本太郎代表といった想定候補を3倍近くの差で引き離し、圧倒的な強さを見せつけたという。自民党も含め、主要な国政政党は独自候補の擁立断念に追い込まれた。

新型コロナ対応で陣頭指揮を執る姿は、間違いなく再選の追い風になった。

だが、小池氏の新型コロナ対応は、決して手放しで称賛できるものではない。都庁関係者によれば、小池氏は当初、「対策は国の責任」との発言が目立ち、主体性は感じられなかったという。実際、安倍晋三首相が小中高校の一斉休校を要請した2月になっても、小池氏は中国に、約30万着の防護服を無償提供している。

小池百合子の敵認定で動きは急加速する

潮目が変わったのは、3月下旬になってからだ。東京都内では、感染者が急増し始めていた。3月28日。新型コロナ対応を所管する西村康稔担当相は、土曜日にもかかわらず小池氏を急遽、呼び出した。

「厚生労働省の調査で、都内の感染者はキャバクラやクラブなど夜の繁華街で感染しているケースが多いと分かりました。感染拡大を防ぐため、都知事にはここの対策をしていただけないでしょうか」

政府からの強い要請を受け、小池氏は週明けの3月30日、臨時の記者会見を開く。

「若者はカラオケやライブハウス、中高年の方々はバーやナイトクラブなど、接待を伴う飲食店に行くことは当面お控えいただきたい」

小池氏は業種を名指しして、利用の自粛を呼びかけた。それまでの暗中模索と異なり、「敵」が明確になったからだろうか。以降、小池氏の動きは急加速する。