そうしたグローバルな生産・販売システムをより強固なものにするには、核になるマザー工場に加え、生産・販売に関する情報の共有化も避けられなかった。全世界の工場や販売部門で情報を共有できるよう、システムと情報伝達の両面で統一仕様を再構築する必要があったのだ。


グローバル生産の要であるマザー工場として存在感が高まるコマツ大阪工場。大型ブルドーザーの大きさに注目。同工場でもフル稼働生産が続いている。

そのためにコマツが開発したのが、「グローバル部品表」と呼ばれる統一仕様である。基本になる車両モデルの部品表を全世界で1つにし、製品の部品品番と構成部品情報のみを独立させたグローバル部品表を作成、これを全世界の工場が共通して利用できるようにした。

「グローバル同時生産・販売システム」を統括するe-KOMATSU推進室の中島輝ITレビュー・企画チーム長は、「最近は、国境を意識することがあまりない」と断り、グローバル部品表やマザー工場に象徴されるコマツ式モノづくりのあり方をこう語る。

「収益が大きく落ち込んだ00年頃、井の中の蛙のやり方ではダメだと痛感し、米国や欧州の厳しい環境規制を取り込んだ“グローバルマシン”をつくらないと太刀打ちできないとわかりました。そのために世界共通のモデルを作成する必要があり、当時普及し始めていた3次元CADの活用を積極的に推進して、現在のグローバル体制を築いてきたのです」


中型油圧ショベル グローバル・クロスソーシング体制

コムトラックスのみならず、生産部門でもITによるハイテク武装が1つの勝利の方程式につながったのである。

建設機械の心臓部に当たるエンジンは、燃費をはじめ性能を左右する重要な位置づけだ。11年から建機の第四次排ガス規制(Tier4)が日米欧で導入される予定で、それをクリアする製品開発が正念場を迎えている。コマツは建機の最重要部品ともいえるディーゼルエンジンを小山工場で集中生産し、世界の自社工場に供給している。同時に、ピストンポンプや走行モーター、コントロールバルブなど油圧機器も手がけており、トランスミッションを除く基幹部品の生産はこの工場が一手に引き受けている。

小山工場でのエンジン生産にスポットを当てる場合、米ディーゼルエンジンメーカー・カミンズとの関係を抜きに語ることはできない。1993年に出資比率50対50の合弁会社「コマツカミンズエンジン」を設立して以来、緊密な共同生産体制を築き上げてきた。98年には新たに開発会社「アイ・ピー・エー(IPA)」を発足させ、小型から大型まで各種エンジンを共同開発している。IPAを通じて両社は得意領域を融通し合い、提携メリットを最大限生かすことで、建機業界の世界的巨人であるキャタピラーに対抗する差別化戦略を一層強化した。(文中敬称略)

(川本聖哉、永野一晃、鶴田孝介=撮影)