なぜ台湾は日本にマスクを寄付できるのか

マスクをたくさん着ければそれだけ効果を高めるというわけではないので、同じ人がたくさんマスクを持つのではなく、できるだけ必要な人に行き渡るようにすることが肝要です。そのためには、「一人の人が何個も買い占める」という状況を止めなければ、いつまでも買いづらい状況は解消されないでしょう。

これには官民一体となった対応が必要と思われます。販売店側ができる施策としては、同じ人が何度も買えないようにマスクの購入に条件を設けることです。たとえば多くの店舗でやっている会員登録をしてもらい、購入時には会員証の提示を義務化することです。これにより、同じ人が複数回購入しようとするとレジで止めることができて、簡単に買い占めを防止することができるでしょう。

民間の努力だけでなく、政府の対応も求められるところです。台湾では1月にはマスク不足になることを見通し、政府がマスクを買い上げました。これにより、市民による購入制限を設けるなど政府が積極的にマスク不足解消に乗り出し、感染拡大防止に大きくリードしています。4月16日には台湾は200万枚のマスクを日本に寄贈することを提案しています。政府主導によるマスク不足が功を奏して、他国である日本に寄贈する余裕まで見せています。

マスク不足が解消するための2つのシナリオ

安倍晋三首相はマスクを2枚配布する「アベノマスク」の施策を打ち出しましたが、これに要する税金は466億円とされています。日本の人口が1億2000万人ですので、国民一人あたりで割ると約390円です。1枚あたり190円の税金をかけてマスクを配布したわけです。もちろん、それだけでは十分な供給量とはいえず、抜本的なマスク不足解消に向けて官民一体となった取り組みが期待されます。

「マスク」は、必要なタイミングと必要な人は限られる特殊な物です。花粉症や風邪がはやる時期にはマスクを必要とする人が増え、医療従事者は日常的にマスクをする必要性がある一方で、年間を通じてまったくマスクをする習慣がない人もいるのです。

新型コロナウイルスに端を発するパンデミックにより、従来はマスクを必要としていなかった人たちにも突然、強烈な需要を生み出すこととなりました。これにより想定外の莫大なマスク需要を生み出すこととなり、その結果として入手が大変困難となりました。

マスク不足が解消されるシナリオは2つあります。一つは幸いにこのパンデミックの脅威が終息することでマスクの莫大な需要が収まるシナリオ、それからもう一つはマスクが十分充足するシナリオです。