「100日後に死ぬワニ」炎上との共通点
実は、安倍総理の炎上は、つい2週間前に炎上したもう一つの事象と重なる点がある。
それが、Twitter上で連載されていたマンガ『100日後に死ぬワニ』だ。あらかじめ死ぬことが宿命付けられているワニと友人の動物との日常を描いたこの漫画は、3月20日に公開された同作の最終話で大きな反響を呼んだ。
作者のきくちゆうき氏のフォロワーは連載開始当初の1万人から200万人以上まで膨れ上がり、最終話の投稿は221万9000いいね、75万5000リツイートを記録した。
最終回の投稿後、SNSユーザーの間では感動の声が見られたほか、最終回の解釈を巡って議論が盛り上がり、ツイッターのトレンドにも選ばれ「ワニくん」は世界ランキング1位を獲得。現代のSNSマーケティングの“お手本”とも言える現象となった。
だが、程なくしてこの『100日後に死ぬワニ』も大きく“燃える”こととなる。
最終回の投稿後、1日経たずしてTwitterの公式アカウントを開設。そこで同作の書籍化や限定グッズの発売、楽天とロフトのコラボ企画の発表など、次々と商業展開が発表されたのだ。
世界観をぶち壊されたファンの「失望」たるや…
そのグッズの点数の多さや、タッグを組む大手企業の多さを含め、用意周到に最終回に向けてマーケティングが進められてきたことが明らかになると、この漫画を追い続けてきた熱心な読者からは不信感が募るようになる。
「一気に冷めた」「もう少し感動に浸らせてほしかった」「死んだのに天使の輪っかをつけてグッズ販売しているのは作品への愛がなさすぎる」など、そのほとんどが作品の世界観をぶち壊されたという“失望”だったのだ。
そして、そこにとどめを刺したのが「電通案件」という言葉に象徴される、大手広告代理店の電通が本作品の商業展開にかかわっていたことが噂されたことだった。
作者のきくちゆうき氏は、「ワニの話は自分1人で始めました」とTwitterで弁解の投稿をするも、コラボ作品のクレジットや、過去の作者のSNS投稿から電通とのかかわりを指摘する声が絶えず、「がっかりした」「101日後に電通に入るワニ」といったように揶揄する声が広がり、ワニをめぐる感動の渦は、一気に炎で燃え上がることになったのだ。
今や、SNS上では日々状況が変わる新型コロナウイルスの問題一色となり、同作のムーブメントはほぼゼロになったと言っても過言ではないだろう。
もし、『100日後に死ぬワニ』がファンの心を掴み続けていたら……。筆者はそう嘆かずにはいられない。