コロナショックでPBRが急低下した理由

3月6日、日経平均株価の平均PBRは1.00を下回った。3月12日にはTOPIX(東証株価指数)でも同じことが起きた。3月中旬、日経平均株価の平均PBRは0.8倍台前半にまで低下した。

PBR(Price Book‐value Ratio)とは、株価が、一株当たりの企業の純資産(資産総額から負債総額を引いた価値、企業の解散価値)に対して何倍であるかを示す尺度だ。計算式を示すと、PBRは株価を1株当たりの純資産で割ることによって求められる。この定義にもとづけば、今回のPBRの急速な低下は、株価の下落によってもたらされたと考えられる。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界経済は“開店休業”というべき状況に陥った。中国では感染が小康状態に向かいつつあるとみられはするものの、日米欧、さらには南米やアフリカ諸国など新興国において感染状況は深刻だ。

感染を抑え込むために、世界各国が国境を封鎖するなどし、人の移動を制限しなければならなくなった。需要が急速に落ち込むと同時に、感染者の増加や防疫のために生産(供給)活動も低下し、さらにはサプライチェーンも混乱している。

私たちの不安感が市場全体に伝染した

それは、企業業績を悪化させ、失業の増加など経済のファンダメンタルズを悪化させるだろう。また、ワクチン開発には12~18カ月程度の時間がかかるとされる。いつ、感染が収束するか先行きが読めないことへの恐怖心が増幅し、“売るから下がる、下がるから売る”という心理が連鎖し、世界各国で株価がかなり不安定に推移した。その結果、PBRが低下した。

重要なことは、資産の価格(価値)には人々の心理が大きく影響することだ。特に、日次、週次といった短期間の市場や経済の変化は、わたしたちの心理に影響されやすい。リスクに対する感覚、考え方は十人十色だ。

また、わたしたちは周囲の行動につられやすいという側面を持つ(群集心理)。今回、ウイルスの影響がどのように収束するか読めないという不安が市場全体に伝染し、価格変動リスクのある資産が投げ売られ、急速に現金化が進んだ。