籠池夫妻と昭恵夫人のスリーショット写真の謎
「森友事件」というとき、その論点は8億円値引きの経緯だけにとどまらない。文書改竄はもちろん、大阪府の小学校設立認可の問題や政官関係、メディアの過熱報道など様々な問題を含む。その森友事件を改めて考えるうえで謎が残ったままになっている3つの日付を上げてみたい。また、3つ目に関しては「これまでに明るみになっていない事実」もここでご紹介しよう。
1つ目は14年4月28日。国有地取引の交渉を行っていた森友学園側と近畿財務局職員との会談で「籠池理事長夫妻と安倍昭恵総理夫人のスリーショット写真」が示された日付だ。朝日新聞などはこの写真提示を機に国有地取引が一気に進んだというストーリーを報じてきた。だが籠池氏は今でこそ「昭恵夫人の写真を示して以降、交渉がスムーズに進んだ。まさに神風だ」と述べているが、当初は「土地からごみが出てきて価格が下がった」ことを「神風」としていた。
そもそも森友案件について近畿財務局から財務省本省に連絡が入るのは、写真提示以前の13年8月15日のこと。近財の交渉記録によれば8月13日に鴻池祥肇議員の秘書から近財に連絡が入り、近財は2日後に本省審理室へ連絡を入れている。
一方、財務省が写真提示当日の交渉記録を公開していないことが「昭恵写真の神通力」を否定しきれない理由であるのも確かで、あえて当日の記録を公開しないとなれば、その意図を探られるのも当然ではある。即刻明らかにすべきだろう。
「8億円値引き」なぜ起きたのか
2つ目は15年9月4日。この日、近財庁舎で設計担当のキアラ建築研究機関、施工業者の中道組、近財、大阪航空局が会議を行っている。森友学園を除外したこの席で、大量の地下埋設物は「場内処分にする」ことが話し合われた。ところが中道組・キアラ建設は、場内埋め戻しで了解した事実を森友側に伝えなかった。校舎の施工を担当した藤原工業が敷地内の埋設物に気づいたのは翌年3月11日だった。
森友側は憤慨、開校が遅れるとなれば賠償問題に発展しかねないと危惧した近財は大阪航空局にごみ撤去費用の見積もりを依頼。大阪航空局は第三者を入れず「国交省の知見」で撤去費を8億1974万円と算出し、撤去せずに価格から費用を差し引く形で国有地の売却価格が1億3400万円になった。
先の文春記事で近財の池田統括官が「8億円値引きの根拠は明確ではない」と言っているのは、この算出額のことだ。ただこの算出額はすでに17年11月に公表された会計検査院の報告によっても〈地下埋設物撤去・処分概算額を算定する際に必要とされる慎重な調査検討を欠いていた〉と結論付けられており、指摘そのものに目新しさはない。
問題は、なぜ業者は森友側に情報を伝えなかったのか、だ。中道組やキアラ建築は理由を明らかにしていない。また、慌てた森友学園側が中道組の紹介で急遽依頼し、近財との交渉を一手に引き受けた北浜法律事務所の酒井康生弁護士も騒動の最中に顧問弁護士を降り、ごみ発覚後の近財との交渉経緯について明らかにしていない。「8億円値引き」の核心に迫るためには彼らの証言も必要になってくる。