40歳を過ぎて高校から通い直した女性も…

このように必要に応じてその時その時に新たなスキルを学んで積み重ねたり、継続した学びをしている人はフィンランドに非常に多い。私の周りにも、50歳近くになって、全く違う分野から手に職をつけたいと保健師になった友人もいる。子育ての経験もあるし、健康分野は自分の関心が高い分野なので、活かせると思ったようだ。

写真=Riku Isohella/Finland Promotion Board

農業に見切りをつけて、40歳を過ぎて高校から通い直した別の友人は、自分の子どもと同じ時に高校を卒業。その後大学に進み、薬剤師になって薬局で働いている。彼女は、転職を決めた時にあっけらかんと、「まだあと20年以上は働けるから」と明るく語っていた。薬剤師になった後も、オンライン講座や専門家向けの研修に参加して医療や薬の知識をアップデートしたり、対人スキルを磨いたりしている。

彼女のご主人は、農家を辞めた後に、森林ビジネスの勉強を40歳を過ぎてからして、友人たちと会社をおこした。シングルマザーで再婚、離婚をする10数年の間に、勉強を続けて保育士から看護師、心理士の資格をとり、45歳を過ぎた今、性科学を学んで青少年向けのカウンセラーになった友人もいる。

マーケティング一本でやってきている大学時代の同級生は、ご主人と二人の子どもを育てながら、時々大学で様々なブラッシュアップ講座を受講して、自分の能力を高めている。大学時代、隣人だった男性は、機械エンジニアとしてエンジニアリング会社で働いていたが、不況のあおりで失業。その後、より高度な機械設計の勉強をして再就職をはたした。

二人に一人は、転職の際に新たな専門や学位を得ている

フィンランドの学びには終わりがないが、それは再チャレンジの可能性に溢れていることも意味している。年齢や性別に関係なく、自分を高めていくことができるし、やり直しもできる。この点は、わたしがフィンランドで一番感動したことの一つである。再就職や転職において、年齢が全く不利にならないとは言えないようだが、教育がそれをある程度カバーしてくれ、公平にきちんと評価してくれる土壌がある。

Sitra(フィンランド・イノベーション基金)が行った雇用調査2017によると、就労年齢人口の10人のうち6人は、これまでのキャリアの中で他の職場もしくは、全く違う分野に転職している。そのうち二人に一人が転職に際し、新しい専門性や学位を取得しているそうだ。学びには価値があり、新たな資格を与え、学び直しがより有意義な仕事に移ることを可能としている。