当時、男はみんな戦争へ行ってしまったものだから、先生は女ばかりだった。それはそれはきれいな先生がいたのよ。その人によくしてもらえたんだよな。それでほかの生徒にやきもちばかり妬かれて、よくいじめられた。

新聞配達の仕事をしてから学校に通っていた

小学校3年生のころかな。おれは新聞配達の仕事をしてから学校に通っていたんだ。

当時は何万と新聞配達をしている小学生がいたな。1区域しか配らないともらえるお金が安いから、おれは2区域配っていた。お金は全部、母親に渡したよ。ほかにも夏休みはアイスキャンディーを売って歩いた。冬休みは子守りをした。おれは子どもを寝かせるの、うまいよ。寝かせておくと子守りは楽じゃない。でも結局お母さんに怒られるの。夜、寝なくて困るのよって。

さて、新聞配達をしてたものだから、いつも学校には始業時間ぎりぎりに行っていた。そうすると、正門の前で4~5人、不良グループが待っているんだよ。

そいつらにかばんをひっくり返されたり、教科書を投げられたり、くだらないことされてな。不良グループの中にミヤタくんっていう子がいたんだ。彼は、学年は一緒だけど年齢は4つくらい上。ある日、体育の授業で海へ行って、相撲大会をした。そうしたら最後、おれとミヤタくんだけが残ったんだ。最後の決戦になって、おれは負けたのよ。そりゃ負けるわな。年上のミヤタくんは体が違うもんな。

そうしたら、おれを可愛がってくれていた担任の先生が「じゃあミヤタくん、今度は私と相撲をとろう」て言ってね。ミヤタくんは先生に投げられた。そしたらみんなは大笑い。それから、ミヤタくんはおとなしくなって、おれもいじめられなくなった。そういう先生、今はいないだろう。

遊びはメンコとかビー玉ばかりやっていた。何も持たずに行って、いっぱい(メンコやビー玉を)持ち帰るのね。そうすると、おふくろに怒られた。「どうしたの。ほかから盗んだの!?」ってな。「いや、勝ったんだよ」と弁明したよ。そんな家庭環境だった。

野球を始めたのは中学3年生から。バッティングをしてみるとな、みんなに褒められるの。ポンポン打てたから。友達が「おまえうまいな。隠れてやっていたやろう」と言うから「やっていないよ」と言っても「うそつけ」って信用してもらえない。野球ってこんな簡単なのかよって当時は思ったな。

でも、家が貧乏でユニフォームが買えなかった。悔しかったな。集合写真にはおれだけ、ランニングと短パンで写っているわけ。試合に行くときは後輩にユニフォームを貸してもらっていた。