トラックの荷台を覗き込んで「あれ? うちのビールじゃないですか。こんなに入れてくれるなんてどこの店ですか」と、さりげなく顔を売る。そのうちに他社のビールの行く先についても、ざっくばらんに話してもらえるようになるのである。
簡単にいえば、そんな工夫の繰り返しによって食い込むことができたのが、セントレジャーゴルフクラブ市原だった。
箭内がこのような営業スタイルを身につけたのは、7年にもわたった京都支社時代だ。東日本を地盤とするサッポロにとって関西は“アウェー”の地。そこで「気が合う酒販店や飲食店オーナーさんにとことん付き合い、味方づくりをした」。
「広く浅く」ではなく「狭く深く」。弱者ならではの、選択と集中作戦だ。たとえば懇意の取引先が新規の店をオープンするときは、自ら駅前に立って3日間もチラシ配りを手伝った。そのうちに「サッポロの箭内に相談すれば、無理をしてでもなんとかしてくれる」というウワサが広がり、酒販店や飲食店の業界で徐々に味方が増えていった。
「箭内さんはほかのメーカーの営業マンに比べて、ものすごくお客を大切にする人です。頻繁に訪問してくれるし、なんでも相談に乗ってくれる。ほんとに信頼してますよ」
セントレジャー市原のレストラン店長、清水俊克は笑顔で箭内の肩を叩いた。ここにも一人、力強い味方をつくっていたのである。(文中敬称略)
※順位はビール各社発表資料調べ