中国の信用スコア「芝麻信用」とは

信用スコアを最初に導入し普及させたのが、中国の芝麻(ジーマ)信用だ。同じ信用スコアだが、LINEスコアとは算出方法が異なる。後述するが、芝麻信用のほうがよりごまかしにくい。つまりLINEスコアは芝麻信用と比べ、数値を不正に上げやすいスコアだといえるだろう。

芝麻信用は、中国を代表するEC企業「阿里巴巴集団(アリババ)」系の金融会社「アントフィナンシャル」がリリースしたサービスだ。芝麻信用は、日本でも見ることができるQR決済「支付宝(アリペイ)」の中の機能であり、芝麻信用のユーザー数はほぼ中国国内のアリペイのユーザー数となる。そのアカウント数は中国で7億、世界で10億と、すでに億単位のユーザーがいるわけだ。

中国政府は、社会全体を信用ある社会に変えていこうとしている。その実現のために、良い行為を行う人や企業にはアメを、その逆にはムチを与えようとする。例えば食の安全問題を引き起こす企業や責任者に対しては、今後も行政や業界団体などでの待遇が悪くなるようにする。人や団体のふるまいの良さを判断するために、政府認定の複数企業が専門に合わせた信用スコアを運用し、その結果を政府側がまとめてあらゆる不正・不良行為を許さないという社会づくりを目指している。

芝麻信用はそのうちの1つで、最も普及している信用スコアだ。中国政府に信用スコアのデータを流しているとか、信用スコアにより人が逮捕されたという話は聞かない。実装はまだであろう。

では芝麻信用では、信用スコアが高いとどんなメリットがあるのか。たとえば、信用スコアが高くなれば特定の銀行で借りられる限度額が大きくなるほか、ホテルのチェックアウト時に現状確認が不要となったり、各種レンタルサービスのデポジットが免除されるという優遇措置がある。

デポジット不要で借りられるものとしては、600点以上でモバイルバッテリーや自転車、傘。またスマートフォンや各種デジタル製品やおもちゃを数日から数カ月、日割りで借りることもできる。700点以上になると、カーシェアもデポジット不要となる。製品の多彩さを見ても、芝麻信用には多くの業者が参入しており、社会に組み込まれたサービスだということがわかる。

芝麻信用のスコアは5つの分野から算出される。1番目が学歴や職業、社会的地位などの「身分特質」、2番目が公共料金や光熱費やECサイトの購入履歴からなる「行為偏好」、3番目が車や不動産資産情報などの「履行能力」、信用スコアを活用したサービスの利用履歴「信用歴史」、他の利用者との繋がり「人脈関係」の5つの分野から行う。