20年以降の中古不動産価格は落ち込む

融資が下りなければ、当然不動産売買は成立しない。結果、価格の多寡にかかわらず一部の不動産業者を除いて業界は冷え込みを見せつつある。「競争優位性を持っている物件を除けば20年以降の中古不動産価格は落ち込むでしょう」。では例外的に希望を見いだせる投資向きの物件はないのだろうか。

「他物件と差別化が図られている将来性のある物件は値が落ちにくいです。例えば、スマホ1つで照明やエアコンが調整できる物件。入居者の生活の利便性が上がり、それが投資家の利益にも直結します。これは新築に限らず、リノベーションした中古物件でも同様です。また、例えば、30~40代独身総合職のOLや看護師に人気の築浅でペット可の1LDK物件は入居がすぐに決まりやすく、値崩れしにくいです」

値段が落ちやすいエリア、落ちにくいエリアはあるのだろうか。

「東京駅周辺(丸の内、大手町、日本橋)や品川など、再開発が今後も見込まれるエリアへのアクセスがよい錦糸町や門前仲町、大井町は検討価値が高いと言えます。また、ほかの街では享受できない個性を持っている街も強いです。せんべろ居酒屋が充実している赤羽、空港から近く、飲食店が充実している蒲田。寺が多く、隅田川沿いの散歩が楽しい浅草。これらの街は1度引っ越すと、長く住む人が多いので投資妙味がある。

ただ、人気エリアでも最寄り駅徒歩10分を超える物件は相当厳しい状況になります。また、かつての高級住宅街であった東横線沿いの『自由が丘』『田園調布』もいまひとつ。城東でも荒川より東の『小岩』『一之江』『葛西』は下がる可能性が高い」

さらに20年は最悪のシナリオが待つ。売却が見込めない物件ばかり揃える不動産会社は、金融機関の信用も落ち、倒産するケースも出てくる可能性が高いのだという。買ってはいけない不動産会社にはどんな特徴があるのか。

「まず見てほしいのは、提携金融機関の数が少ない業者。商談時に『ローンをご提案いただける金融機関はどちらか?』と聞いて、7~8以上あるなら一安心。一方、ノンバンク系しか取り扱いがないケースはかなり危ないでしょう。業歴が浅く実績が少ないか、金融機関から信用されていない証拠です」

また、近年一部で話題となっている「ボロ物件投資」も時限爆弾が爆発する一歩前だという。「19年は自然災害が多い年でしたがそもそも日本国内で自然災害リスクのないエリアはありません。思い切って投資した物件が半損状態になった場合、借金だけが残ります。仮に直せたとしても、給湯器が故障したときに修繕費30万円でさえすぐに払えない人が投資している物件は修繕もされず空き家になります。人口減少のこの時代に、長期的視点で見てボロ物件投資は賢い選択ではない。これまで普通の会社員に属性を超えた融資が下りる環境が異常でした」。

依田泰典
東京マンションオーナーズ代表
不動産投資家。複数のスタートアップへ出資・経営支援をする等幅広く投資活動を実践。
(写真=時事通信フォト)
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