意外! 読解力はゆとり教育で上がり、脱ゆとり教育で下がった

図表2には、読解力だけでなく、数学的リテラシーや科学的リテラシーのテスト結果を含めて、3教科の日本の点数と順位の変化を示した。テストの配点はOECD諸国の平均がほぼ500点になるように調整されているため、順位ばかりでなく、点数そのものでどの科目が強いかといった比較やそれぞれの科目の時系列変化を追うことができる。

日本の推移を概観すると、数学的リテラシーや科学的リテラシーの成績はほぼ安定的に推移しているのに対して、読解力についてはアップダウンが激しいことが分かる。特に、今回18年は順位が大きく低下したばかりでなく、点数が504点とOECD平均近くまで下落したことが理解される。一部に調査参加国の増加〔図表1の(注)参照〕が読解力の順位急落の原因と解されているが、点数の推移から判断すれば、それは見せかけの成績低下とはいえないのである。

今回の読解力低下について、ゆとり教育との関連についてあまり言及されていないが、2003年の読解力順位急落がPISAショックとして受け止められ、ゆとり教育の見直しにつながったという経緯が思い起こされる。

2012年の順位上昇は脱ゆとり教育の成果とも見られたが、実は12年調査の対象者は小1から中3まで授業時間が最も少ない「ゆとり教育」(2002~11年)を受けた世代だったのでそれは間違いだ。そして、今回18年の対象者は、まるごと「脱ゆとり教育」世代なのである。

つまり、皮肉なことに、「読解力はゆとり教育で上がり、脱ゆとり教育で下がった」ともとれる結果なのである。要は、教育行政だけで学力が上下したりはしないというのが実態であろう。マスコミも含めて、かつてPISA調査の結果で「ゆとり教育、是か非か」を大いに騒いだことには知らん顔なので一言ふれておく。