目だけでなく、頭の良い鳥もいる。カラスだ。猛禽類並みの視力に加えて、カラスは知能も発達している。日本では公園の水飲み場で蛇口をひねって水を飲むカラスや、駅の自動券売機で遊ぶカラスが観察されているが、米国のワシントン大学の研究によると、カラスは自分に嫌なことをした人間の顔を覚えていて、嫌いな人間をピンポイントで襲うことができることがわかっている。しかも、ヒトに仕返しするときには仲間のカラスも誘って一緒に襲うことまでやってくるのだからたまらない。

鳥は右に避ける蚊は上か下に

東京都環境局のホームページに「カラスに関するQ&A」が掲載されており、カラスの威嚇や襲撃への対処法として「カラスの攻撃を避けるためには、巣やヒナに近づかないことが一番」と書かれているが、まさに、カラスには嫌われないようにするしかない。カラスを含むすべての野生鳥獣は、鳥獣保護管理法で許可なく捕獲したり処分したりすることは禁止されている。人間の側の悪意が伝わらないようにして、カラスを刺激しないことが大切だろう。もしも本当に嫌われると東京都環境局の表現を借りれば「カラスは後ろから人の頭をめがけて飛んできます」ということになるから要注意だ。

カラスと同様に都市部の鳥であるハトも、人間の個体を識別する能力があるそうだ。カラスが嫌いな人間を見分けるのと逆に、ハトは自分にエサをくれる人間を見分けて近づいていくそうだ。ハトは首を振って歩くのが特徴だが、これも視覚に関わるものだという。人間の目は、デジカメの手ブレ防止機能のように、動くものを見るときに無意識に眼球を動かして対応しているというが、ハトが動くものを追う場合は、目だけではなく首ごと動かすことで視界を安定させるのだという。

鳥の生態で感心するのは、渡り鳥などが何千、何万羽の単位で飛んでいるときに、鳥同士が決してぶつからないことだ。オーストラリアのクイーンズランド大学の研究によると、鳥は個体同士が異なる高度で飛ぶことに加えて、正面から向かってくる鳥にたいしては、右に寄って避ける習性があることがわかったという。研究チームは短いトンネルの両端か10羽のセキセイインコを飛ばす実験を100回以上実施したが、一度も衝突は起きなかった。衝突が起きそうな場合は、必ず右側に避けるという結果になったという。これが集団で飛ぶ秘訣なのだ。

鳥同士は決してぶつからないのに、飛行機と鳥はよく衝突している。国土交通省のまとめによると、日本国内でバードストライクは年間1500~2000件発生している。これまでの研究から考えられることは、飛行機の機体が大きすぎるために、右に避けたつもりが避けきれないのだろう。

避けるといえば、蚊だ。蚊は避けるときに上か下に行く。蚊を叩くときは左右から挟み撃ちにするのではなく、上下で挟むように手のひらでパシリとやる。視力ではなく、最後は人間の知恵が勝利するのだ。

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