訴訟費用は、何十万ドルもかかるとみられたが…

ポストは、まずSIGARに、その決定は「公共の利益に反するから法的に不当」として、上告する。そして、ここが重要なのだが、2017年3月には、SIGAR調査全体の他のインタビューについても、情報自由局に情報公開請求をしたのだった。

そして、2017年10月には、ポスト紙は、SIGARのトップを、文書を開示しないことは不当として、提訴するのである。

この訴訟費用は、何十万ドルもかかるとみられたが、キャサリン・グラハムの「質が利益をつれてくる」の言葉どおり、ポスト紙は、このフリンのケースを、SIGARの調査全体の試金石として使ったのだった。

SIGARは、ついに何百もの、この調査でのインタビューを訴外で、ポストへ渡したのだった。これらは、「アメリカの国民が、常にうそをつかれてきた」ことを示している文書だ、というSIGARのトップのジョン・ソプコの言葉とともに。

「戦争の目的がまったくわからない」

実際、インタビューには驚くべき情報が含まれていた。戦況を有利に見せるために、データの改竄かいざんが常態化していたことや、タリバンを掃討するためといって山賊まがいのウォーロード(軍閥)たちに多額の金が消えていたこと、また「戦争の目的がまったくわからない」といった前線の指揮官の言葉などが次から次へと出てきたのだった。それは腐敗をえぐるような情報だった。

映画『ペンタゴン・ペーパーズ』では、深夜掲載を決めたグラハムの一言で印刷所に一報が入り、印刷工が、印刷開始のボタンを押す。コールドタイプの活字で作られた版から次々と新聞が刷られていく。待ち受ける配送車が、払暁のワシントンの街に、新聞の梱包を投げ下ろしていく。このようにして、秘密報告は、国民の共有のものとなった。

現在はデジタルによってポストは、この秘密報告を国民と共有している。