もう1つの特徴的な症状が「間欠跛行」。これは歩いていると腰のまわりや足に痛みやしびれ、脱力感が生じて、一時的に歩けなくなる症状です。前屈みになって休んでいれば、再び歩けるようになりますが、しばらく歩くと、また歩けなくなるという状態を繰り返します。間欠跛行は脊柱管狭窄の患者さんの約70%に見られます。ただし、足の血管がつまる「閉塞性動脈硬化症」といった別の病気でも起こるため、鑑別が必要です。

腰や足の痛みやしびれといった症状があり、画像検査などでも脊柱管が狭窄している所見があれば、脊柱管狭窄と診断されるわけですが、高齢者の中には、脊柱管が狭くなっていても症状が表れない人もいます。一方で、脊柱管狭窄だけでなく、精神的なストレスなど心理社会的要因も重なった腰痛もあります。そうしたケースでは、脊柱管狭窄の治療を行っても腰痛が解消されないことがよくあります。

「神経ブロック注射」を選ぶケースも

脊柱管狭窄の薬物療法では、消炎鎮痛薬や神経のまわりの血流を改善するプロスタグランジンE1製剤が主流でしたが、最近では、強い痛みやしびれにも効く「プレガバリン」という神経障害性疼痛の治療薬もよく使われています。さらに、19年には、神経障害性疼痛治療薬「ミロガバリン」という新薬もラインアップに加わりました。また、心因性の原因が重なっている場合、抗うつ薬も併用するケースがあります。薬物療法が奏功しない場合、「神経ブロック注射」を選ぶケースもあります。神経やその周辺組織に局所麻酔を注入する治療法で、「神経根」と呼ばれる神経の枝の部分の障害であれば、痛みを取ることも期待できます。

とはいえ、薬物療法は対症療法で、根治療法ではありません。もし「馬尾」と呼ばれる神経の幹の部分が障害を受け、排尿・排便障害といった症状が表れているケースであれば、症状の進行を止め、神経機能の悪化を防ぐためにも、早い段階での手術をお勧めします。最近では、体への負担の軽い内視鏡手術も普及しています。内視鏡手術の場合、約1週間の入院が必要で、入院費は24万円(自己負担が3割の場合)が目安です。

(構成=野澤正毅)
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