動物と比較しながら解剖した人体は30体と記録しており、解剖手稿という専用のノートまで残しています。そこに記されているのは、ふつうの人なら疑念すら抱かない人体の「なぜ」を探求しつくした軌跡。少し抜き出してみましょう。
好奇心のおもむくまま、疑問の解消に没頭する。ダ・ヴィンチの洞察力の根源をなす部分と言っていいでしょう。
「自然」はアイディアの宝庫
自然崇拝主義——これもまた怪人二十面相のようなダ・ヴィンチの一面です。自然への興味は終生変わらず、生涯の研究テーマでもありました。自然を賛美するこんな言葉も残しています。
ダ・ヴィンチにとって、自然は絵画の偉大なる師匠であり、発明をする際のアイディアの源泉でした。例えば、船を設計する際は魚の形状からヒントを得ています。
①前方が丸い形状、②後方が丸い形状、③前方も後方も同じ形状の3種類を検証し、魚と同じ形状である①が最も速く前進できることを確かめました。