海外の学校に入学できないことがある
――海外では、ワクチン未接種だと学校に入学さえできないことがあると聞きました
【森戸】特に欧米では多いですね。日本の定期接種・任意接種のワクチンは外国に比べて少なく本当に最低限なので、すべて接種済みでないといけません。それに加えて、例えばアフリカ方面であれば黄熱ワクチンといったように、国や地域によってワクチンを追加接種する必要があります。さらに、集団生活をするなら髄膜炎菌ワクチンなども必要でしょう。急に保護者の海外赴任が決まった場合、短期/長期の留学をすることになった場合、海外でホームステイをする場合、急いで接種するとしても間に合わないかもしれませんね。
【宮原】つい先月、マレーシアでのサマースクールに参加した静岡県藤枝市の9歳と5歳の姉妹が、帰国後に麻疹を発症したことが発表されました(※3)。麻疹と風疹を予防するMRワクチンを接種していなかったとのことです。予防接種をしていない状態で、海外へ行くのはとてもリスクが高いので、やめていただきたいこと。このお子さんたちも心配ですが、帰国して自宅へ着くまでに多くの人に接触しているわけで、それも心配です。特に麻疹は感染力が強く、免疫のない集団では1人の感染者が12~14人を感染させるとされています。
1000人中1.5人は亡くなる麻疹
――恐ろしいですね。麻疹のリスクは大人でも高いでしょうか?
【宮原】もちろんです。東南アジアへの出張前に、会社が推奨しているA型肝炎ウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、日本脳炎ワクチンの接種は確認したのに、麻疹ワクチンの接種を確認していなかったため、麻疹脳炎にかかった30代男性がいました(※4)。これは海外での事例ですが、国内で感染するリスクも当然あります。接種歴は記憶だけだとあてにならないことが多いのです。だからこそ、わからない場合は抗体検査をするか、調べなくても問題はないので念のために追加接種をしていただきたいと思っています。
なお、子供のときに風疹の予防接種を受けていない世代で、MR(麻疹風疹混合ワクチン)5期者の対象として無料クーポンが届いている方は、必ず抗体検査へ行ってください。
※4 https://www.niid.go.jp/niid/ja/measles-m/measles-iasrd/7279-447d02.html
【森戸】麻疹を発症すると、高熱、咳、赤い発疹、肺炎、心筋炎、脳炎などが起きて苦しむだけでなく、最善の治療をしても1000人中1.5人は亡くなります。さらに後遺症なく治ったとしても、数年間に渡って免疫力が低下したり、数年たってから死に至ることのある恐ろしい亜急性硬化全脳炎(SSPE)が起こったりすることも……。
風疹も、血小板減少性紫斑病や脳炎を起こすことがあり、妊娠中の女性が感染すると胎児が高確率で「先天性風疹症候群」になるリスクがあります(※5)。
※5 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/429-crs-intro.html