中国市場は、コマツの大橋徹二常務執行役員生産本部長によると「2月はマーケットの調子が良く、3月も底堅く推移し、想定範囲内の販売台数が確保できた」そうで、現在の在庫水準は必要最低限度とされる0.3~0.4カ月分にすぎない。

販売不振が最も深刻な米国では、業界平均で5~6カ月分の在庫を抱えるのが一般的だったが、大橋氏が現地法人の社長時代に根本から見直した。

代理店が受注から在庫を確保する方式を改め、代理店在庫をコマツの資産として保有する自社管理に切り替えたのだ。これにより、半分以下の2カ月にまで削減できた。さらに北米に6カ所あった組立工場を3カ所に半減し、在庫削減を推し進める。

米国と同様に販売不振の続く欧州でも、「米国同様、順次、代理店在庫を自社管理にして値崩れを防ぐ。現在はドイツ、フランスの在庫はほぼゼロ、イタリアもそれに近い。他の欧州販社でも在庫削減を進めていく」(大橋氏)


代理店在庫を自社在庫にして値崩れを防ぐ

これらの在庫削減が可能になった背景には、全世界で約14万台にまで拡大した建機稼働管理システム「KOMTRAX(コムトラックス)」による稼働状況の把握と、それを基にした需要予測の精度の向上がある。

「コムトラックスですべての需要を予測できるわけではないが、情報は多ければ多いほど仮説を検証するのに役立ちます。どこよりも減産を早くし、増産を早くすることで、基本的には在庫ゼロを実現したい」(大橋氏)

コマツの強さは、実質在庫ゼロを追求するオペレーション、コムトラックスを使った独自の需要予測にあらわれている。

(川本聖哉=撮影)