中国の景気減速と中国企業の追い上げのWパンチ
世界的なサプライチェーンの混乱に加え、韓国にとって最大の輸出先である中国の減速も、韓国の輸出減の一因だ。足元、中国経済は成長の限界を迎えつつある。これまでのように韓国が中国への輸出を足掛かりにして企業業績を高め、経済の安定を目指すことは難しくなっている。
一方、長めの目線で考えると、中国には将来への期待を高め得る要素もある。それは、中国のIT先端分野での開発力が米国に比肩する、あるいは分野によってはそれを上回るほどの水準に達していると考えられることである。これまで韓国がシェアを伸ばしてきた半導体やディスプレーなどの分野では、中国が急速に追い上げている。
それだけではない、8月、ファーウェイは独自OSの「ハーモニー(鴻蒙)」を発表した。当初、ハーモニーの発表は今秋から来春にかけて行われると考えられてきたことを踏まえると、先端分野における中国の創造力はすさまじい。ファーウェイは傘下のハイシリコンを通して高性能の半導体である「キリン」の生産能力も高めている。
サムスンは韓国産のフッ化水素を製造工程に投入したが…
中国の追い上げに対して、韓国の企業はどのようにして自力で苦境を打開すればよいか、策を見いだせていないように見える。この見方などから、外国人投資家は韓国株を売却している。韓国の技術力そのものへの不安を強める市場参加者は少なくない。
これまで韓国は、自国で競争力のあるテクノロジーやモノを生み出すのではなく、事実上、わが国の技術力に依存してきたといえる。例えば、フッ化水素などの半導体材料に関しては、わずかな純度の差が製品の性能に大きく左右する。サムスン電子は韓国産のフッ化水素を試験的に製造工程に投入しているが、対象は製品への影響が少ない工程に限られている。
また、各国の企業はサプライチェーン再編コストの負担などから、製品原価の引き下げを重視し始めた。アップルは有機ELパネルの調達先をサムスン電子から中国企業に切り替えようとしているようだ。韓国企業が自力で技術力を高め、さらに磨くことができるか、先行き不安は高まっている。