合計特殊出生率は「1」を割る世界最低水準に
長期的に考えると、韓国経済は縮小均衡に向かう恐れがある。
経済の実力は、労働力と資本の投入量と全要素生産性(労働と資本の投入以外の要素が成長に与える部分)に基づく。全要素生産性は、“イノベーション”に負うところが大きい。イノベーションとはこれまでにはなかった発想などを用いることによって、新しいモノやコトを生み出すことだ。端的に言えば、人々が「ほしい!」と思ってしまうヒット商品などを生み出すことがイノベーションと考えればよい。ヒット商品の創造が需要を生み出し、経済の成長を支える。
労働力、資本、イノベーションの観点から韓国経済を考えると、労働力の点において韓国はわが国以上に厳しい状況に直面している。2018年、韓国の合計特殊出生率は0.98と世界最低水準だった。少子化、高齢化が進む状況は、韓国経済の成長にはマイナスだ。
資本に関しては、財閥企業や大手金融機関を中心に、外国人投資家の株式保有比率が高い。これは韓国国内での資本蓄積が進んでこなかったことの裏返しといえる。今後、韓国の人口が減少に向かう可能性を踏まえると、国内の資本は減少し、経済の実力は低下する恐れがある。
問題は、韓国経済が財閥企業に依存してきたこと
この状況下で韓国が成長を目指すには、イノベーションの発揮が欠かせない。そのためには、政府主導で構造改革を進めることが重要だ。韓国は、成長期待の高い分野にヒト・モノ・カネの経営資源が再配分され、新しい取り組みが進みやすい状況を目指さなければならない。
問題は、韓国経済が財閥企業に依存してきたことだ。それに加え、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、最側近による複数の不正疑惑に直面している。徐々に、韓国世論の文大統領に対する見方には、変化の兆しが見て取れる。不正への批判が増える中、文大統領が多様な利害を調整し、国を一つにまとめていくことは困難だろう。
当面、世界のサプライチェーンの混乱は続き、韓国の輸出は減少傾向となる可能性がある。もし米国の景気後退懸念が高まる場合には、韓国経済がかなり深刻な状況に陥る展開も軽視できない。